代行返上:企業年金制度の転換
厚生年金基金は、企業が従業員のために老齢厚生年金の一部を肩代わりして支給する制度でした。これは、国の年金制度を補う役割を担っていました。いわば、公的な年金に上乗せして、従業員の老後の生活をより豊かにするための仕組みでした。しかし、社会の高齢化や経済の変動といった年金制度を取り巻く環境が変化する中で、企業年金の運営を安定させる必要性が高まりました。
そこで、平成14年4月1日に確定給付企業年金法が施行されました。この法律により、厚生年金基金はそれまで肩代わりして支給していた老齢厚生年金の一部を国に返上することになりました。そして、その財源を、新たに作られた確定給付企業年金に移行することができるようになりました。これは、企業年金の運営を国がまとめて管理することで、制度の運営を安定させ、どこにどのようにお金が使われているかを分かりやすくする狙いがありました。
この移行によって、厚生年金基金は解散もしくは消滅したものと見なされ、これまで負っていた年金給付の義務がなくなりました。企業にとっては、年金給付の責任を負わなくて済むようになる一方、従業員にとっては、国が管理する年金制度で老後の生活の保障を受けることになります。この制度の変更は、企業年金の仕組みを大きく変える重要な転換点となりました。これにより、より安定した年金制度の運営を目指したのです。