ERM:欧州通貨統合への道
ヨーロッパの統合を目指すために、かつて導入されていたのが為替相場機構、略してERMと呼ばれる制度です。これは、ユーロ通貨が導入される前のヨーロッパ連合、つまりEUに加盟していた国々で使われていました。それぞれの国の通貨の価値を一定の範囲内に収めることで、為替レートの変動を抑えることを目的としていました。
ERMは、ヨーロッパ通貨制度、EMSの中核を担う重要な仕組みでした。EMSに参加する国々の通貨は、互いの中心となる為替レートが決められていました。そして、この中心レートから上下2.25%の範囲内で通貨の価値が変動するように、各国が協調して介入する義務がありました。
具体例を挙げると、仮にフランスの通貨であるフランとドイツのマルクの為替レートの中心レートが、1フラン=0.3マルクだとします。この場合、フランスとドイツは、0.29325マルクから0.30675マルクの間で為替レートが動くように介入する必要がありました。もし、市場での取引によってフランの価値が下落し、0.29325マルクを下回ってしまった場合、ドイツはフランを買い支え、フランスは自国通貨であるフランを売ることで為替レートを安定させようとします。
このように、ERMは加盟国間で協調して為替レートの安定を図るシステムでした。為替レートの変動を抑えることで、国と国との貿易や投資における為替変動によるリスクを減らし、経済的な結びつきを強める効果が期待されていました。また、ERMはユーロ導入への重要なステップとなり、ヨーロッパ経済の統合に大きく貢献しました。