費用処理

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年金

退職給付会計と未認識数理計算上の差異

従業員が将来受け取る退職金の現在価値を計算し、会社の負債として計上することを退職給付会計といいます。この計算は、将来の給与の伸び率やお金の価値の変動率など、様々な前提を用いて行われます。しかし、これらの前提は未来の不確実な出来事を予測するため、実際の結果と最初に想定していた値との間にズレが生じることがあります。このズレを数理計算上の差異と呼び、その中でも当期末時点で費用として計上されていないものを「未認識数理計算上の差異」といいます。 具体的にどのような場合に未認識数理計算上の差異が生じるのか見てみましょう。例えば、会社が退職金のために積み立てているお金を運用して得た利益が、想定よりも大きかった場合が挙げられます。この場合、退職金の原資が増えるため、差異が生じます。また、従業員の平均寿命が想定よりも延びた場合も同様です。寿命が延びれば、会社が退職金を支払う期間が長くなるため、必要な退職金の総額が増加し、差異が発生します。その他、退職者数や昇給率の想定と実績の差なども差異の発生要因となります。 これらの差異は将来支払う退職給付費用に影響を与えるため、適切な管理が必要です。未認識数理計算上の差異は、将来の会計期間にわたって費用として認識されるため、企業の財務状況を適切に評価するために、その金額と発生要因を理解することが重要です。また、想定と実績の差が大きくなる要因を分析し、必要に応じて将来の予測値を見直すことで、より正確な退職給付会計を行うことができます。
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年金会計と回廊アプローチ

従業員の老後の暮らしを支える仕組みとして、企業年金制度は大切な役割を担っています。企業は、将来従業員に年金を支払うという約束のもと、毎期決まった費用を積み立てていく必要があります。この会計処理は複雑で、専門的な知識が欠かせません。特に、年金の計算で生じる差異の処理方法は、企業のお金の流れに大きな影響を与える可能性があります。そこで、今回はアメリカで用いられている会計基準の「回廊アプローチ」という考え方について説明します。 この「回廊アプローチ」は、年金計算で生じる差異が一定の範囲内であれば、費用の計上を先延ばしできるというものです。 具体的には、将来支払う年金額を予測するために、様々な計算を行います。例えば、従業員の平均寿命や、将来の給与、運用資産の利回りなどを予測します。しかし、これらの予測は必ずしも正確ではなく、実際の結果とズレが生じることがあります。このズレを「数理計算上の差異」と呼びます。 もし、この差異が毎期すぐに費用として計上されると、企業の業績は予測の変動に大きく左右されてしまいます。そこで、「回廊アプローチ」では、一定の範囲内であれば、この差異をすぐに費用計上するのではなく、将来の期間に分散して計上することを認めています。 この一定の範囲は、「回廊」と呼ばれ、通常、年金資産の市場価格の10%以内とされています。つまり、数理計算上の差異がこの10%以内であれば、すぐに費用計上する必要はなく、将来の期間に少しずつ計上することができます。 この仕組みにより、企業は短期的な業績の変動を抑え、安定した財務状況を保つことが可能になります。また、年金資産の市場価格が大きく変動する局面でも、急激な費用計上の増加を防ぎ、財務への影響を緩和することができます。 このように、「回廊アプローチ」は、企業年金制度の会計処理において重要な役割を果たしています。企業は、この仕組みにより、従業員の退職後の生活保障を図りつつ、安定した経営を行うことができるのです。