労働価値説:価値の源泉を探る
商品は、それを作り出すために様々な資源や人が関わって初めて世の中に送り出されます。では、その商品の価値はどうやって決まるのでしょうか?物の値打ちを測る物差しの一つとして、「労働価値説」というものがあります。労働価値説とは、簡単に言うと、ある商品を作るのにどれだけの労働時間を使ったかで、その商品の価値が決まるという考え方です。例えば、10時間かけて作った手作りの椅子と、2時間かけて作った手作りのスプーンがあるとします。労働価値説に従うと、椅子の価値はスプーンの5倍になります。なぜなら、椅子を作るのに5倍の時間がかかっているからです。
もう少し詳しく説明すると、椅子を作るには、木を切り出し、加工し、組み立て、ニスを塗るといった多くの作業が必要です。スプーンを作るよりも多くの時間と労力がかかるのは当然です。労働価値説は、このような人の手による労働こそが商品の価値を生み出す源泉だと考えています。ですから、より多くの労働が投入された商品は、より高い価値を持つとされます。
この考え方は、商品の価値を客観的に測ろうとする試みであり、「客観的価値論」とも呼ばれます。つまり、商品の価値は、需要と供給の関係や個人の好みといった主観的な要素ではなく、生産に費やされた労働時間という客観的な尺度で決まると考えるのです。しかし、現実の経済では、商品の価格は需要と供給の関係やブランドイメージ、希少性など様々な要因によって変動します。10時間かけて作った手作りの椅子よりも、2時間で大量生産された機械製の椅子のほうが安く売られていることも珍しくありません。つまり、労働時間だけで商品の価値を完全に説明することは難しいと言えるでしょう。とはいえ、労働価値説は、商品に込められた作り手の努力や、労働の大切さを改めて考えさせてくれる重要な視点を与えてくれます。