債券取引の安全確保:純与信額とは
債券の売買、特に即日で決済する取引ではなく、ある程度の期間を置いて債券と現金を交換する取引(現先取引)では、相手が約束通りに債券や現金を渡してくれるかどうかの信用が大変重要です。もし相手が約束を破ったら、大きな損失を被る可能性があります。
このような取引における危険性を測るものさしの一つに「純与信額」があります。純与信額とは、取引相手に対してどれだけの金額の信用リスクを負っているか、言い換えれば、最悪の場合どれだけの損失が出る可能性があるかを示す数値です。
純与信額を計算するには、まず相手への債権額、つまり相手に請求できる金額を把握します。例えば、債券を売って代金を受け取る約束をしている場合、その代金が債権額となります。次に、相手から受け取った担保の額を調べます。担保とは、もし相手が約束を破った場合に備えて、あらかじめ受け取っておく財産のことです。現金や他の債券などが担保として使われます。
純与信額は、債権額から担保の額を引いた金額です。例えば、相手への債権額が1億円、相手から受け取った担保の額が8千万円だとすると、純与信額は2千万円になります。これは、もし相手が約束を破った場合、最大で2千万円の損失が出る可能性があることを意味します。
この計算は、自分と相手との間で双方向で行われます。つまり、自分が相手に対して債権を持つと同時に、相手も自分に対して債権を持っている場合があります。それぞれの立場で純与信額を計算し、その差額が最終的な純与信額となります。この最終的な純与信額を見ることで、取引相手との間でどちらがより大きな信用リスクを負っているかを判断することができます。純与信額が大きければ大きいほど、信用リスクも高くなるため、取引相手や取引内容をよく吟味する必要があります。