有効需要

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非自発的失業とは?

非自発的失業とは、働く意思と能力があるにもかかわらず、仕事に就けない状態を指します。これは、個人の怠慢や能力不足によるものではなく、経済全体の景気低迷が主な原因です。景気が悪くなると、企業は生産を縮小し、費用削減のため人員整理を行います。その結果、多くの労働者が職を失うことになります。これらの労働者は、働きたくないのではなく、働く場を失っただけなのです。つまり、労働者の意思に反して失業している状態を非自発的失業と呼びます。 具体的に例を挙げると、ある工場で長年働いていた熟練工が、不況による工場の閉鎖で失業したとします。彼は仕事に誇りを持ち、高い技術力を持っていますが、仕事が見つかりません。これは、彼個人の問題ではなく、経済状況が悪化し、求人が減少したことが原因です。このように、能力や意欲があっても、経済的な要因で失業してしまうケースが非自発的失業です。 非自発的失業は、個人にとって生活の基盤を失うだけでなく、社会全体にも悪影響を及ぼします。まず、失業者の増加は消費の減少につながり、経済の停滞を招きます。また、労働力が有効活用されないため、社会全体の生産性も低下します。さらに、長期にわたる失業は、労働者の技能低下や働く意欲の喪失にもつながり、社会問題に発展する可能性もあります。非自発的失業は経済の健全性を測る重要な指標であり、政府は適切な経済政策によって雇用創出や景気回復に努める必要があります。
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ケインズモデル:需要と供給の均衡

需要を中心とした経済理論は、経済活動を理解する上で人々や企業による財やサービスの購入意欲、つまり需要の役割を特に重視しています。従来の経済学では、財やサービスの供給が需要を自然と生み出すと考えられていました。しかし、世界恐慌のような大きな不況を目の当たりにした経済学者ケインズは、需要こそが供給を決定づけるという画期的な考え方を提示しました。人々や企業がどれだけ財やサービスを求めているか、つまり需要の総量が、生産量や雇用量といった経済全体の規模を決めるというのです。需要が旺盛であれば、企業はより多くの財やサービスを生産し、雇用を増やすことで需要に応えようとします。逆に、需要が低迷すれば、企業は生産を縮小し、雇用を減らすことになります。これがケインズの基本的な考え方です。 世界恐慌では、人々の消費意欲が冷え込み、企業も投資に消極的になりました。この需要の落ち込みが、生産の減少や失業の増加に繋がったことをケインズの理論は見事に説明しました。ケインズ以前の経済学では、不況は一時的な現象であり、市場メカニズムが働けば自然と回復すると考えられていました。しかし、ケインズは需要不足が長期にわたる不況をもたらす可能性を指摘し、政府が積極的に介入する必要性を唱えました。具体的には、政府が公共事業などを通じて需要を作り出す財政政策や、中央銀行が金利を調整する金融政策によって、需要を刺激し経済を活性化させることができると主張したのです。ケインズの需要中心の経済理論は、その後の経済政策に大きな影響を与え、現在でも不況対策を考える上で重要な理論的枠組みとなっています。
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ケインズの疑問:市場の失敗と政府の役割

1929年に始まった世界恐慌は、世界中の経済に大きな打撃を与え、未曾有の不況を引き起こしました。株の価値は暴落し、多くの会社が倒産に追い込まれ、人々は職を失い、苦しい生活を強いられました。人々は日々の暮らしに困窮し、社会全体に不安が広がりました。この恐慌は、当時の経済学の主流であった新古典派経済学にとって、大きな課題となりました。 新古典派経済学は、市場の力によって経済は常に良い状態に向かい、働く意思のある人は皆仕事に就けると考えていました。しかし、現実には深刻な不況となり、多くの人が職を失ったにもかかわらず、市場は自ら回復する様子を見せませんでした。経済学の教科書で説明されているような市場の調整機能は、現実にはうまく働かなかったのです。 この市場の機能不全ともいえる状況に、イギリスの経済学者であるジョン・メイナード・ケインズは疑問を投げかけました。彼は、市場がうまく働かず、不況から抜け出せない真の原因を探ろうとしました。ケインズは、従来の経済学では説明できないこの状況を分析し、政府が積極的に経済に介入する必要性を主張しました。具体的には、公共事業などを通じて需要を作り出し、経済を活性化させる政策を提唱しました。このケインズの考え方は、後の経済政策に大きな影響を与え、世界恐慌からの脱却に重要な役割を果たしました。世界恐慌は、経済学の考え方を見直す大きな転換点となり、その後の経済学の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。
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ケインズ経済学入門

ジョン・メイナード・ケインズは、19世紀の終わり頃、1883年に生まれ、20世紀半ばの1946年に亡くなった、イギリスの経済学者です。ケンブリッジ大学で、経済学の大家として知られるアルフレッド・マーシャルの指導を受け、研究に励みました。やがて彼自身も、経済学の教授となり、後進の育成にも力を注ぎました。ケインズが活躍した時代は、世界恐慌という、かつてないほどの大きな経済危機に見舞われた時代でした。従来の経済学では、この危機を乗り越えるための解決策を見出すことができませんでした。そこでケインズは、世界恐慌という現実を目の当たりにし、従来の経済学の考え方を見直し、新しい理論を打ち立てました。これが「ケインズ経済学」と呼ばれるものです。ケインズ経済学の核心は、有効需要の原理にあります。不況時には、人々の消費や企業の投資意欲が低下し、経済全体が縮小していきます。この状況を打開するためには、政府が積極的に財政支出を行い、需要を創出することが重要だとケインズは考えました。公共事業などを通して雇用を生み出し、人々の所得を増やすことで、消費や投資を促し、経済を活性化させようとしたのです。ケインズは、経済学者として研究活動を行うだけでなく、政府の役人としても活躍しました。彼は、イギリス財務省の顧問を務め、自らの理論に基づいた政策提言を行いました。また、国際通貨基金(IMF)の設立にも尽力するなど、国際的な舞台でも活躍しました。世界恐慌という未曾有の危機において、ケインズの思想は、希望の光となりました。彼の理論と実践は、世界経済の回復に大きく貢献し、現代の経済学や経済政策にも、大きな影響を与え続けています。世界恐慌のような経済の大きな落ち込みを二度と起こさないために、彼の考え方は、今もなお、重要な役割を担っていると言えるでしょう。