ケインズ経済学入門:市場メカニズムと有効需要
市場の働きには、価格の変動だけで需要と供給の釣り合いがとれるわけではないという限界があります。昔からある経済の考え方では、物やサービスの値段が変わることで、需要と供給は自然と調整されると考えられてきました。しかし、物価が上がったり下がったりしにくい場合もあると指摘したのが、ケインズという経済学者です。
彼は、賃金や物価は硬直的、つまり簡単には変わらないため、需要と供給のズレは値段ではなく、生産量や雇用といった量の変化で調整されると考えました。これを「量の調整」と呼びます。具体的に説明すると、商品が売れ残っている時、会社は値段を下げるよりも、作る量を減らして在庫を調整しようとします。
また、働く人の世界でも、賃金はそう簡単には下がらないため、仕事を求める人が多くても仕事がない状態、つまり失業という形で需要不足が現れます。
ケインズはこのように、市場メカニズムは完全ではなく、常にうまくいくとは限らないと考えました。そして、経済がうまくいかない時には、国が積極的に働きかける必要があると主張しました。例えば、需要が不足している時には、国が公共事業などにお金を使うことで、需要を作り出し、経済を活性化させるべきだと考えました。これは、従来の経済学とは大きく異なる考え方であり、その後の経済政策に大きな影響を与えました。