市場分断仮説:金利決定の仕組み
市場分断仮説とは、債券の満期によって市場がいくつかに分かれており、それぞれの市場で金利が決まるという考え方です。たとえば、短期の債券を扱う市場、中期の債券を扱う市場、長期の債券を扱う市場といった具合に、満期ごとに独立した市場が存在すると仮定します。
この仮説では、短期金利と長期金利はそれぞれ別の市場で決まるため、直接的な関係はないと考えます。つまり、短期金利が上がっても、長期金利は影響を受けない可能性があり、その逆もまたしかりです。これは、ある特定の満期の債券にしか投資しない投資家がいるためです。例えば、年金基金は将来の年金支払いに備えるため、長期の債券を好んで買います。一方で、銀行は短期の資金運用を行うため、短期の債券を主に扱います。このように、投資家の運用方針や投資の制約によって、資金が満期をまたいで自由に動くことはなく、市場が分断されていると考えます。
それぞれの市場では、債券の需要と供給のバランスによって金利が決まります。例えば、長期の債券市場で需要が高まれば、長期金利は上がり、逆に需要が低迷すれば長期金利は下がります。短期金利も短期債券市場の需給で同様に決まります。市場分断仮説は、このような市場メカニズムを前提として、異なる満期の金利の関係、つまり利回り曲線と呼ばれるものを説明しようとする理論の一つです。