帰属計算:GDPの隠れた立役者
国民経済の規模を測る上で欠かせない指標である国内総生産(GDP)は、原則として市場で取引された財やサービスの価値の合計として算出されます。しかし、私たちの経済活動の中には、市場で取引されないものも数多く存在します。例えば、自宅で野菜を育てて自分で消費したり、自分で所有する家に住んだりする場合、これらは市場では取引されません。このような市場取引のない経済活動をGDPに反映させるために用いられるのが「帰属計算」です。帰属計算とは、市場で取引されていない財やサービスに、あたかも市場で取引されているかのように見なし、統計的にその経済的価値を推定する手法です。
帰属計算の代表的な例として、「持ち家の帰属家賃」が挙げられます。賃貸住宅に住んでいる場合は、家賃という形で市場取引が発生し、GDPに計上されます。しかし、持ち家の場合は家賃の支払いが発生しないため、そのままではGDPに含まれません。そこで、持ち家にも仮に家賃が発生していたと想定し、その金額を推計してGDPに含めます。これが持ち家の帰属家賃です。
自営業者が自ら生産した財やサービスを自分で消費する場合も、帰属計算の対象となります。例えば、農家が自家用に収穫した野菜や、パン屋が焼いたパンを従業員に無償で提供するケースなどが該当します。これらも市場取引を経由しないため、帰属計算によってその価値を推計し、GDPに計上します。
帰属計算によって、市場取引のない経済活動をGDPに反映させることで、より正確で実態に即した経済状況の把握が可能となります。帰属計算は、GDPという経済指標の精度を高め、政策立案や経済分析の基礎資料として重要な役割を担っていると言えるでしょう。