原価計算

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経営

歴史的原価会計:その本質と影響

歴史的原価会計、あるいは原価主義会計とは、財産や負債を手に入れた時点の値段で帳簿に記録する会計の方法です。たとえば、土地や建物を買った時の値段で帳簿に書き込み、その後、市場の値段が変わっても、基本的に帳簿の値段は変えません。 この方法の一番の特長は、実際に取引された値段に基づいて財産の価値を記録するところです。このため、会計処理がとても分かりやすく、誰が行っても同じ結果になりやすいという利点があります。また、人為的に帳簿上の数字を操作したり、恣意的な評価を加えたりする余地も少なくなります。 会社の会計を分かりやすくし、財務諸表の信頼性を高める上で、歴史的原価会計は大きな役割を果たしています。過去の経営成績を正しく把握し、将来の経営計画を立てるための基礎資料としても欠かせません。 一方で、物価が大きく変動する時期には、歴史的原価会計では財産の本当の価値を適切に表せないという問題点も指摘されています。たとえば、買った時の値段が安い土地をずっと保有していると、何十年も後に財務諸表上では安い値段のまま記録されますが、実際の価値は大きく上がっているかもしれません。このように、帳簿上の値段と実際の値段の差が大きくなる可能性があるため、物価変動の影響を考慮する必要があるでしょう。 歴史的原価会計は、客観性と信頼性を重視した会計の方法であり、企業会計の基本となっています。しかし、その性質上、物価変動といった外部環境の変化に対応しきれない側面もあります。そのため、歴史的原価会計の限界を理解した上で、他の会計手法も併用しながら、会社の状況を総合的に判断していくことが大切です。