お金の量:名目と実質
名目貨幣量とは、世の中に出回っているお金の総額を、額面通りに合計した金額のことです。これは、私たちが普段、財布の中に入れている紙幣や硬貨といった現金だけでなく、銀行の預金口座に入っているお金のように、すぐに現金として引き出すことができるものも含みます。つまり、今すぐに使えるお金すべての合計が名目貨幣量です。具体的には、手元にある現金、銀行の普通預金や当座預金、すぐに解約してお金にできる定期預金などが含まれます。
この名目貨幣量は、様々な要因で増減します。日本銀行のような中央銀行がお札を新しく印刷して発行すれば、世の中に出回るお金の量が増えるので、名目貨幣量は増加します。逆に、銀行が持っている国債を日本銀行に売却すると、銀行が受け取るお金は日本銀行に吸収されるため、名目貨幣量は減少します。また、銀行がお金を貸し出す融資活動も、名目貨幣量に影響を与えます。
ここで注意しなければならないのは、名目貨幣量は物価の変動を考慮していないということです。物価が上がると、同じ商品やサービスを買うにも、より多くのお金が必要になります。例えば、100円で買えたりんごが、物価上昇によって200円になったとします。りんごの値段は倍になりましたが、名目貨幣量は、りんごの値段の変化を反映していません。もし、物価上昇に合わせて名目貨幣量が増えていれば、お金の価値は変わりません。しかし、名目貨幣量が変わらないまま物価だけが上昇すると、お金の価値は実質的に下がってしまうのです。つまり、同じ金額のお金で買えるものの量が減ってしまうということです。
このように、名目貨幣量は経済の状況を正確に表しているわけではないため、物価の変動も合わせて考える必要があります。物価の変動も考慮に入れた、実質的なお金の価値を測る指標としては、実質貨幣量というものがあります。経済の動きを正しく理解するためには、名目貨幣量だけでなく、物価の動きや実質貨幣量といった他の経済指標も合わせて見ていくことが重要です。