財政ファイナンス:禁じ手か?
財政ファイナンスとは、政府の資金繰りを支えるために、中央銀行が新たに発行したお金で政府が発行する国債を直接購入する仕組みです。通常、政府は道路や学校などの公共事業や社会保障といった政策に必要な資金を税金だけでは賄いきれない場合、国債を発行して市場から資金を調達します。この国債は、金融機関や企業、個人投資家などが購入し、将来、利子とともに償還されます。
しかし、財政ファイナンスの場合、これらの市場を通さず、中央銀行がお金を刷って国債を直接引き受けることになります。これは、例えるなら、政府が自分の借金を自分で帳消しにするようなものです。一見、手軽な資金調達方法に見えますが、様々な問題を引き起こす可能性があります。
まず、財政ファイナンスは、財政規律の低下を招きやすいと言えます。市場から資金調達する場合には、市場の評価という厳しいチェックを受けますが、中央銀行が直接引き受ける場合には、そのチェック機能が働かなくなります。そのため、政府は歳出拡大を続けやすくなり、財政赤字が膨らむ可能性が高まります。
さらに、急激なインフレを引き起こすリスクも懸念されます。中央銀行がお金を大量に発行すれば、市場に出回るお金の量が増え、モノやサービスの価格が上昇しやすくなります。これが行き過ぎると、急激な物価上昇、つまりインフレにつながり、国民生活に大きな影響を与えます。
また、中央銀行の独立性を損なう恐れもあります。中央銀行は物価の安定を維持するために、独立した立場で金融政策を行うことが重要です。しかし、財政ファイナンスを行うと、政府の意向に左右されやすくなり、金融政策の効果が損なわれる可能性があります。
こうした様々なリスクを踏まえ、多くの国では財政ファイナンスは禁じ手とされています。財政の健全性を保ち、国民経済の安定を守るためには、財政ファイナンスに頼ることなく、健全な財政運営と適切な金融政策を行うことが不可欠です。