マクロ経済

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経済知識

経済モデル入門:仕組みと種類

経済活動を分かりやすく説明するために、経済モデルという道具を使います。現実の経済は、人々の行動や企業の活動、政府の政策など、複雑に絡み合った要素が絶えず変化しています。これらの全てを一度に理解することは、とても難しいことです。例えるなら、巨大な迷路の中で、全体像を把握せずに、出口を探し回るようなものです。そこで、経済モデルが登場します。 経済モデルは、現実経済を単純化して表現した模型のようなものです。飛行機の模型が、複雑なエンジンや配線まで再現していないように、経済モデルも細かな要素は省き、重要な部分だけを抜き出します。具体的には、需要と供給の関係や、物価と金利の動きなど、経済活動の根幹に関わる要素を選び出し、それらの関係性を数式やグラフで表します。 経済モデルは、特定の経済現象に焦点を当てて作られます。例えば、消費者の行動を分析するためのモデルや、国の経済全体の動きを予測するためのモデルなど、様々な種類があります。それぞれのモデルは、特定の目的のために、必要な要素だけを組み合わせて作られます。まるで、料理人が、様々な食材の中から、必要なものだけを選んで料理を作るように、経済学者も、現実経済の中から、分析に必要な要素だけを抜き出して、モデルを構築します。 このように、経済モデルは、複雑な経済現象を理解するための便利な道具です。経済モデルを使うことで、様々な経済政策の効果を予測したり、経済の将来を展望したりすることができます。もちろん、モデルは現実の全てを反映しているわけではないので、その限界を理解した上で使うことが重要です。しかし、経済の仕組みを理解し、将来の動きを予測する上で、経済モデルはなくてはならない存在なのです。
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経済の大きさと勢いを測るものさし

私たちが日々の暮らしを送る上で、社会全体の豊かさを知ることはとても大切です。この豊かさを測る一つの重要な尺度が、経済の大きさです。経済の大きさは、人々の活動によって生み出される品物やサービスの取引量、そしてそれらの価格によって決まります。 活発な取引が行われ、たくさんの品物やサービスが作られれば、経済は大きく成長します。経済が成長すれば、人々の生活は豊かになり、より良い暮らしを送ることができるようになります。逆に、取引が停滞し、生産活動が低迷すると、経済は縮小し、人々の生活にも悪い影響が出ます。仕事が減ったり、収入が下がったりする可能性も出てきます。 経済の大きさを正確に測ることは、私たちの社会の現状を把握し、将来の経済活動を予測するために欠かせません。現状を正しく理解することで、私たちは今後どのような対策が必要なのかを考えることができます。例えば、経済が縮小している時に、国や地方の自治体は人々の生活を守るため、様々な政策を実施します。人々に仕事をしてもらうための支援や、生活が困窮している人々への支援などが考えられます。 また、将来の経済活動を予測することも、国や地方の自治体が適切な経済政策を立案し、実行していく上で欠かせない情報となります。将来、経済が大きく成長すると予測できれば、人々の生活水準も向上すると期待できます。逆に、経済が縮小すると予測できれば、それに備えた対策を事前に講じることが可能になります。このように、経済の大きさを測ることは、私たちの社会をより良くしていくために必要不可欠なのです。
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要素費用表示の国内所得とは

要素費用表示の国内所得とは、私たちの国で経済活動によって一年間に新しく作り出された価値の合計額から、間接税と呼ばれる税金の種類を引いたものです。 では、新しく作り出された価値とは一体何でしょうか。これは「付加価値」とも呼ばれ、生産活動の中で新しく加えられた価値のことを指します。 例えば、パン屋さんが小麦粉や砂糖などの材料を仕入れて、パンを焼き、販売するとします。この時、パンの販売価格から小麦粉や砂糖といった材料費を引いた金額が、パン屋さんが新たに生み出した価値、つまり付加価値です。 この付加価値を、経済活動全体で合計したものが、間接税を引く前の国内所得となります。間接税とは、商品やサービスの価格に上乗せされる税金で、消費税などが代表的な例です。これらの税金は、生産活動によって生み出された価値とは別のものなので、国内所得を計算する際には差し引く必要があります。 この国内所得は、国民経済全体の規模や成長の度合いを測る上で、とても大切な指標となります。国内所得が高いほど、経済活動が活発で、人々の生活も豊かになる傾向があります。 さらに、国内所得の変化を分析することで、景気が良くなっているのか悪くなっているのかを把握することができます。これは、今後の経済政策を考える上でも非常に役立ちます。過去の国内所得の推移を調べることで、どのような経済政策が効果的だったのか、または効果がなかったのかを検証し、より良い政策を立てることができるのです。 このように、要素費用表示の国内所得は、私たちの国全体の経済状況を理解し、将来の経済をより良くしていく上で、欠かすことのできない重要な情報なのです。
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総供給曲線:経済の動きを知るカギ

供給曲線とは、ある商品やサービスの値段と、その値段で売りに出される数量の関係を表す曲線のことです。値段が上がれば、売りに出される数量も増え、反対に値段が下がれば、売りに出される数量も減るという関係が、通常見られます。 この関係は、企業の立場から考えると理解しやすいでしょう。企業は、より高い値段で商品を売ることができれば、それだけ多くの利益を得ることができます。利益が増えれば、もっとたくさん商品を作って売ろうという気持ちになり、生産量を増やすことに繋がります。反対に、商品の値段が低い場合は、せっかく商品を作っても利益は少なくなってしまいます。そうなると、生産意欲は下がり、作る数量も自然と減っていきます。 供給曲線は、右肩上がりの曲線として描かれます。これは、値段と供給量の間には正の繋がりがあることを示しています。つまり、値段が上がると供給量も増え、値段が下がると供給量も減るという関係です。 この供給曲線は、経済活動の仕組みを理解する上で、とても大切な役割を果たします。例えば、ある商品の値段が急に上がったとします。供給曲線を使うと、値段の上昇によって、どのくらい供給量が増えるのかを予測することができます。また、天候不順で原料が手に入りにくくなった場合など、様々な要因が供給量にどう影響するかを考える上でも、供給曲線は役に立ちます。供給曲線は市場の動きを理解するための基礎となる考え方であり、経済の様々な場面で活用されています。
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要素所得:知っておくべき基礎知識

財やサービスを作るには、人、土地、お金といった資源が必要です。これらの資源を提供する見返りとして支払われるお金のことを要素所得といいます。経済活動において、この要素所得の流れを理解することはとても大切です。 資源は大きく3つに分けられます。まず「労働」です。働く人が会社に労働力を提供することで、会社は財やサービスを作ることができます。この労働の対価として支払われるのが賃金や給与です。私たちが毎月受け取るお給料も、この要素所得に含まれます。 次に「土地」です。会社が工場や事務所を建てる土地を提供する見返りとして支払われるのが地代です。地主は土地という資源を提供することで、地代という形で要素所得を得ます。 最後に「資本」です。事業を始めるにはお金が必要です。このお金のことを資本といい、資本を提供する人のことを資本家といいます。資本家は事業に投資することで、その見返りとして利子や配当といった要素所得を得ます。私たちが銀行に預金して受け取る利子や、株式投資で受け取る配当金などもこれに含まれます。 このように、人、土地、お金といった資源を提供することで私たちは要素所得を得ています。そして、会社はこれらの資源を組み合わせて財やサービスを作り、それを売ることで利益を得ます。その利益の一部が要素所得として、資源を提供した人々に還元されるのです。この要素所得の流れが、経済を循環させて私たちの生活を支えているのです。 国全体の経済活動を見る指標として、国民経済計算があります。この国民経済計算においても、要素所得は重要な要素となっています。要素所得を調べることで、国全体の経済の状況を把握することができるのです。
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景気動向指数を読み解く

景気動向指数は、経済の今とこれからを把握するための重要な道具です。これは、様々な経済の数字をまとめて分析することで、経済全体の流れを掴むことを可能にします。 企業は、この指数を参考に経営判断を行います。例えば、指数が上昇傾向にある場合は、設備投資を拡大したり、新規事業を展開したりするなど、積極的な経営戦略を採用するかもしれません。逆に、指数が下降傾向にある場合は、コスト削減や事業縮小など、守りの経営に徹する可能性が高まります。 個人投資家も、景気動向指数を投資判断に活用します。指数の上昇は、株式市場の活況を示唆するため、株式投資への意欲を高めるでしょう。一方で、指数の低下は、投資リスクの高まりを意味するため、安全な資産への投資に資金を振り向けるなどの対応が考えられます。 政府にとっても、景気動向指数は経済政策の立案に欠かせない情報源です。指数に基づいて、景気を刺激するための財政政策や金融政策を調整することで、経済の安定化を図ります。 景気動向指数は、私たちが経済の動きを理解し、将来に備える上でも重要な役割を果たします。経済の状況を把握することで、家計のやりくりを見直したり、将来のキャリアプランを考えたりする際に役立ちます。 景気動向指数を理解することは、経済の変化に適切に対応し、私たちの生活を守る上で非常に大切と言えるでしょう。
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平均貯蓄性向:将来設計の鍵

貯蓄性向とは、家計における収入に対する貯蓄の割合を表すものです。簡単に言うと、稼いだお金のうち、どれだけの割合を貯蓄に回しているかを示す指標です。例えば、毎月の手取り収入が30万円で、そのうち6万円を貯蓄に回した場合、貯蓄性向は6万円を30万円で割って100を掛けた20%となります。 この貯蓄性向は、将来への備えに対する意識を反映しています。貯蓄性向が高い人ほど、将来の生活設計を重視し、住宅購入や教育資金、老後資金など、将来必要となるお金を計画的に準備していると考えられます。逆に貯蓄性向が低い場合は、現在の生活を重視し、消費に積極的と言えるでしょう。旅行や趣味、外食など、今を楽しむためにお金を使うことを優先している傾向があります。 貯蓄性向は、年齢や生活環境、経済状況など様々な要因によって変化します。一般的には、年齢を重ねるにつれて、結婚や出産、住宅購入など、人生の転機を迎えるため、将来への備えとして貯蓄性向が高まる傾向にあります。また、近年では、将来の年金制度や社会保障制度への不安から、若年層でも貯蓄性向が高まっているという現状も見られます。 景気の良し悪しも貯蓄性向に影響を与えます。景気が良い時は収入が増えやすいので、貯蓄に回せるお金も増え、貯蓄性向は上がりやすくなります。逆に景気が悪い時は収入が減り、貯蓄性向も下がりやすくなります。さらに、金利の変動も貯蓄性向に大きく関わってきます。金利が高い時は、預貯金で得られる利息が多いため、貯蓄のメリットが大きくなり、貯蓄性向は上がりやすくなります。反対に、金利が低い時は、預貯金で得られる利息が少なくなるため、貯蓄のメリットは小さくなり、貯蓄性向は下がりやすくなります。 このように、貯蓄性向は様々な要因に影響されるため、一概に高い方が良い、低い方が良いとは言えません。個々の生活状況や将来設計、経済状況などを考慮し、自分に合った適切な貯蓄性向を見つけることが大切です。
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平均消費性向:経済の体温計

消費性向とは、家計において、もらったお金のうちどれだけを買い物に使うかを示す割合のことです。簡単に言うと、収入からどれくらい支出するかという、お金の使い方のくせを表す数字とも言えます。 この消費性向の値が大きいほど、人々は収入の多くを物やサービスの購入といった消費活動に使っていることを意味します。反対に、消費性向が小さい場合は、収入の大部分を貯蓄に回し、消費活動にはあまりお金を使わない傾向があると言えます。 消費性向は、個々人の買い物の仕方を知る上で役立つだけでなく、国全体の経済の動きを掴むためにも欠かせないものです。例えば、消費性向が高い状態、つまり人々が積極的に買い物をする状況では、社会全体のお金の動きが活発になり、景気は上向く可能性が高まります。お店は商品がよく売れ、企業は利益を出し、さらに人を雇うといった良い循環が生まれるからです。 反対に、消費性向が低い状態、つまり人々が貯蓄に励み、あまり買い物をしない状況では、商品の需要が伸び悩み、企業の売り上げは減少し、景気の減速につながることも考えられます。人々が将来への不安からお金を使わなくなると、経済全体が冷え込んでしまうのです。 このように、消費性向は経済の状態を測る体温計のような役割を果たし、今の景気の良し悪しや、これからの景気の動向を予測する手がかりとなります。政府や企業は、消費性向の動きを注意深く観察することで、適切な経済政策や経営判断を行うことができます。
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生産手段:富を生み出す源泉

ものや役務を作り出す活動、つまり生産活動には、人々の力以外にも様々な資源が必要となります。これらをまとめて生産手段と呼びます。生産手段は大きく分けて、資本と土地の二つに分類できます。 まず資本とは、生産活動に用いられる財のことを指します。具体的には、工場や機械、設備など、ものを作るための道具や場所が挙げられます。工場では、製品を組み立てるための機械や、材料を加工するための設備が不可欠です。また、運搬用のトラックやコンピューターなども資本に含まれます。これらは全て、人々の労働を助け、より効率的にものや役務を作り出すために用いられます。 資本は、人々の手によって作り出されたものであるため、生産財とも呼ばれます。 次に土地とは、自然界から得られる資源のことを指します。農地や森林、鉱山などが代表的な例です。農地は作物を育てる場所として、森林は木材を得る場所として、鉱山は鉱物資源を得る場所として、それぞれ生産活動に欠かせない資源を提供します。また、土地は工場や住宅を建てるための場所としても利用されます。 土地は、人間が手を加えることなく存在する自然の恵みであることから、天然資源とも呼ばれます。 生産手段は、それだけでは価値を生み出すことができません。人々の労働力と組み合わせることで、初めてものや役務という価値が創造されます。例えば、高性能な機械であっても、人が操作しなければ何も生み出せません。肥沃な土地であっても、人が耕作しなければ作物は育ちません。このように、生産手段と労働力は相互に作用し合い、社会の豊かさを生み出す源となっているのです。生産手段の種類や量は、経済活動の規模や生産性を大きく左右します。そのため、生産手段をどのように活用するかは、経済を考える上で非常に重要な要素となります。
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預金歩留まり率で銀行の経営状態を測る

お金を預かる仕事をしている銀行にとって、預け入れられたお金がどれくらい残っているかはとても大切なことです。これを数字で表したものが預金歩留まり率です。ある期間に預けられたお金のうち、一定の時間が経った後にどれだけがまだ預けられているかの割合を示しています。 簡単に言うと、この数字はお客さんがどれくらい長く銀行にお金を預け続けてくれているかを表しています。預金歩留まり率が高いということは、お客さんがその銀行を信頼し、安心して預け続けてくれていることを意味します。これは銀行にとって、安定した経営の土台となるお金を確保できているという良い兆候です。 反対に、預金歩留まり率が低い場合は、多くのお客さんがお金を引き出してしまっていることを示しています。これは、銀行に対する信頼が低いか、他により良い条件で預金できる場所を見つけた可能性があります。このような状態が続くと、銀行の経営は不安定になり、お金が足りなくなる危険性も出てきます。 銀行はお客さんから預かったお金を元手に、様々な活動をしています。ですから、預金は銀行にとっての生命線とも言えます。新しいお客さんを集めることも大切ですが、既にお金を預けてくれているお客さんに長く預け続けてもらうことも同様に重要です。 そのために銀行は、お客さんがお金を預け続けるメリットを提供する必要があります。例えば、高い利息をつける、手数料を安くする、便利なサービスを提供するなどです。銀行は預金歩留まり率を常に注意深く観察し、改善していくことで、安定した経営を続けることができるのです。
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預金準備率操作:金融政策の仕組み

準備率操作とは、日本の中央銀行である日本銀行が、景気の調整を行うために行う金融政策の一つです。これは、民間の銀行が日本銀行に必ず預け入れなければならないお金の割合である「準備率」を調整することで、世の中に出回るお金の量を管理する仕組みです。この準備率は、法律によって定められているため、法定準備率とも呼ばれています。 日本銀行は、景気を良くしたい、つまり経済活動を活発にしたい時には、この準備率を下げます。準備率が下がると、民間の銀行は日本銀行に預けるお金が少なくなり、自由に使えるお金が増えます。この増えたお金を企業や個人に貸し出すことで、企業の設備投資や個人の消費活動が活発になり、景気が上向く効果が期待できます。例えば、ある銀行が100億円持っていて、準備率が2%だとすると、その銀行は2億円を日本銀行に預け入れ、残りの98億円を貸し出すことができます。しかし、準備率が1%に下がると、預け入れるお金は1億円になり、貸し出せるお金は99億円に増えます。このように、準備率が下がることで、貸し出しが増え、経済活動が活発になります。 反対に、景気が過熱し、物価が上がりすぎている時などには、日本銀行は準備率を上げます。準備率が上がると、民間の銀行は日本銀行に預けるお金が増え、貸し出せるお金が減ります。そのため、企業や個人がお金を借りづらくなり、投資や消費活動が抑えられ、景気が落ち着く方向に向かうと考えられます。前述の例で言えば、準備率が2%から4%に上がると、預け入れるお金は4億円になり、貸し出せるお金は96億円に減ります。このように準備率を調整することで、日本銀行は世の中に出回るお金の量をコントロールし、景気の安定を図っています。準備率操作は、他の金融政策と合わせて用いられることが多く、経済状況に合わせて適切に調整されます。
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景気の収縮局面を理解する

経済活動は常に同じ状態ではなく、まるで生き物のように波のように変化します。この経済活動の活発さには周期的な変動があり、これを景気の循環、あるいは景気の波と呼びます。景気は、好況期と不況期を交互に繰り返すことで、まるで波のように上昇と下降を続けます。 景気が良い時期、つまり好況期には、企業は活発に生産活動を行い、人々の所得も増加します。新しい事業を始めたり、設備投資を行う企業が増え、雇用も拡大するため、失業率は低下します。消費意欲も高まり、街には活気があふれます。 しかし、好況期が永遠に続くことはありません。やがて生産が過剰になったり、物価が上昇しすぎることで、景気は下降を始めます。これが不況期です。不況期には、企業の業績が悪化し、設備投資が抑制されます。雇用も縮小するため、失業率は上昇します。人々の所得も減少し、消費意欲も冷え込みます。街には暗い影が落ち、不景気の波が押し寄せます。 この景気の波を理解するためには、様々な経済指標を見る必要があります。国内で生産されたモノやサービスの合計額を示す国内総生産や、雇用に関する統計データである雇用統計など、様々な指標が景気の状態を映し出します。これらの指標は、景気の良い時には高い値を示し、景気の悪い時には低い値を示すなど、景気の波に合わせて周期的に変動します。 これらの経済指標を注意深く観察し、景気の波を理解することで、将来の経済動向を予測することができます。そして、予測に基づいて、政府や企業は適切な経済対策を講じることが可能になります。例えば、不況期には政府が公共事業を増やすなどして景気を刺激したり、企業が新しい商品やサービスを開発することで需要を喚起したりすることで、不況の波を乗り越え、再び好況期へと向かうことができます。このように、景気の波を理解することは、経済の安定と発展のために非常に重要です。
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経済の体温計:総需要曲線

需要曲線とは、ある商品やサービスの価格と、消費者が購入したいと思う量(需要量)の関係を表すグラフです。横軸に需要量、縦軸に価格を取り、価格と需要量の関係を線で結びます。一般的には、価格が下がると需要量は増え、価格が上がると需要量は減るという関係にあります。これは、価格が安いほど手に取りやすくなるため、多くの人が購入しようとするからです。この関係を視覚的に表したものが需要曲線であり、右肩下がりの曲線として描かれることが多いです。 需要曲線は、経済活動において重要な役割を果たします。企業は、需要曲線を分析することで、どの価格帯でどれだけの商品を販売できるのかを予測できます。適切な価格設定や生産量の決定に役立ち、経営戦略を立てる上で欠かせない情報源となります。また、消費者の立場からも、需要曲線を理解することは有益です。商品の価格変動が自分の購買行動にどう影響するかを理解するのに役立ちます。 需要曲線は、様々な要因によって変化します。例えば、消費者の所得が増加すると、同じ価格でもより多くの商品を購入できるようになるため、需要が増加します。これは、需要曲線が右側に移動することを意味します。逆に、不況などで所得が減少すると、需要は減り、曲線は左に移動します。その他にも、関連商品の価格変動や、消費者の好み、季節の変化なども需要曲線に影響を与えます。例えば、ある商品と似た機能を持つ代替商品の価格が下がると、消費者はそちらに流れるため、元の商品の需要は減少し、曲線は左に移動します。このように、需要曲線は常に一定ではなく、様々な要因によって変化することを理解しておくことが大切です。
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好景気の呼び名:時代を映す景気

世の中が活気に満ち、物が良く売れ、人々の暮らし向きが良くなる時期が長く続くと、その時代を象徴する呼び名が付けられることがあります。まるで時代のニックネームのようなものです。特に、高度経済成長期には、日本の神話にちなんだ名前が多く使われました。例えば「神武景気」や「岩戸景気」などは、日本を建国したとされる神武天皇や、天照大神が隠れた天岩戸の神話に由来しています。これらの名前は古事記や日本書紀といった古い書物から取られており、当時の活況や将来への明るい見通しを人々に強く印象付けました。人々は、景気の良さを神話の時代の繁栄になぞらえ、希望に満ちた未来を描いていたのです。 近年では、国際的な大きな催し物に関連付けた名前や、当時の政治の施策を反映した名前も使われるようになってきました。例えば、2020年の東京五輪を控えた時期は「五輪景気」という言葉が盛んに使われました。これは、五輪開催に向けた建設需要や観光客の増加による経済効果への期待を反映したものです。また、「アベノミクス景気」といった呼び名は、当時の首相の経済政策を表す言葉として使われました。このように、景気の呼び名は、単なる経済の状況を表す指標を超えて、時代の背景や社会全体の雰囲気を映し出す鏡のような役割を果たしています。人々がどのような出来事に注目し、どのような希望や不安を抱いていたのか、景気の呼び名を通して、当時の社会の様子を垣間見ることができます。まるで、時代のアルバムをめくるように、過去の出来事を振り返り、未来への展望を考えるきっかけを与えてくれるのです。
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国民経済計算:93SNA入門

経済の動きを正確に捉え、各国が比較できるよう、世界共通の物差しとなる国民経済計算体系(SNA)。1993年に国連統計委員会で採択された93SNAは、まさにこの物差しに当たる重要な枠組みです。世界経済の状況を把握し、将来への展望を描くための羅針盤と言えるでしょう。 93SNA以前にもSNAは存在しましたが、経済の国際化や金融取引の複雑化といった時代の変化に対応するため、93SNAでは概念や計算方法が見直され、より精密なものへと進化しました。93SNAは、一国の経済活動を体系的に記録し、分析するための国際的な基準であり、各国が経済統計を作成し、比較する際の共通の土台を提供します。これは、各国の経済政策の立案や評価、そして国際的な経済協力にとって欠かせない役割を果たしています。 93SNAの中心となるのは、生産、分配、支出、蓄積といった経済活動の主要な流れを捉えることです。これらの流れを正確に把握することで、経済全体の動きを理解し、今後の動向を予測することが可能になります。例えば、生産の増加は雇用や所得の増加につながり、支出の増加は需要の拡大を示唆します。また、蓄積の増加は将来の経済成長の基盤となります。 93SNAは、複雑な経済現象を分かりやすく整理し、分析するためのツールです。初めてSNAに触れる方でも理解しやすいよう、基本的な考え方から具体的な活用事例まで、これから詳しく説明していきます。93SNAを学ぶことで、経済の仕組みをより深く理解し、社会全体の動きを捉える力を養うことができるでしょう。93SNAは、経済学を学ぶ学生、経済政策に関わる人、そして経済の動向に関心のある全ての人にとって、非常に重要な知識と言えるでしょう。
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国民経済計算の歴史:68SNAとは

世界恐慌や第二次世界大戦といった未曽有の危機を経て、世界経済は大きな混乱に陥りました。荒波にもまれる世界経済を立て直し、そして、安定した成長の道筋を描くためには、各国経済の実態を正確に把握することが何よりも重要となりました。こうした切実な必要性に応える形で登場したのが、国民経済計算、すなわち国民経済計算体系(SNA System of National Accounts)です。 国民経済計算は、一国の経済活動を網羅的に記録し、多角的に分析するための統計的な枠組みを提供します。物やサービスの生産、所得の分配、そして家計による消費といった経済活動の主要な側面を体系的に捉え、国内総生産(GDP)をはじめとする重要な経済指標を計算するための統一的な基準を定めています。この基準を設けることによって初めて、異なる国や地域の間でも経済状況を比較分析することが可能になるのです。 この国民経済計算によって、政策を立案する立場にある人たちは、経済状況を客観的に評価し、適切な政策を決定するための確固たる根拠を得ることが可能になります。まるで船の羅針盤のように、国民経済計算は政策担当者を正しい方向へと導く役割を果たすと言えるでしょう。さらに、国際的な比較分析も容易になるため、世界経済全体の動きを理解する上でも国民経済計算は必要不可欠なものとなっています。 1968年に導入された国民経済計算体系(68SNA)は、この国民経済計算の体系を国際的に統一するための重要な第一歩となりました。これにより、世界各国が共通の土俵で経済状況を比較検討できるようになり、国際的な協調や経済政策の立案がより円滑に進む基盤が築かれたのです。