ボトルネックインフレ:供給制約が生む物価上昇
物価が上がっていく現象を、私たちはよく『ものが高くなる』と表現しますが、経済学ではこれを『インフレ』と呼びます。インフレには様々な種類がありますが、その中で『ボトルネックインフレ』と呼ばれるものがあります。これは、まるで瓶の首が細いせいで中身が流れにくいのと同じように、特定の品物や資源の供給が滞ることで、物価全体が押し上げられる現象です。
ものが高くなるには、一般的に需要が供給を上回る必要があります。しかし、ボトルネックインフレは少し違います。需要は十分にあるのに、供給が需要に追いつかないことが原因なのです。つまり、供給の制約こそがボトルネックインフレの根本原因です。この供給の制約は、様々な要因で起こり得ます。
例えば、大きな自然災害や疫病の流行によって、物を生産したり、運んだりする流れが滞ってしまうことがあります。また、特定の材料が足りなくなったり、働く人が不足したりする場合も供給制約につながります。これらの要因によって、企業は必要な材料や人手を確保できなくなり、生産量を減らさざるを得なくなります。生産量が減れば、市場に出回る品物の量も減り、需要と供給のバランスが崩れて、物価が上がっていくのです。
近年では、世界中でこのボトルネックインフレの例を数多く見ることができます。例えば、電化製品に欠かせない部品である半導体が不足したことで、自動車の生産が滞り、価格が上昇しました。また、エネルギー価格の上昇は、様々な品物の生産費用を押し上げ、私たちの生活に大きな影響を与えています。これらの事例は、特定の品物や資源の供給不足が、経済全体にどれほど大きな影響を与えるかを示す、まさにボトルネックインフレの典型例と言えるでしょう。ボトルネックインフレは、需要側の問題ではなく供給側の問題であるため、需要を抑える政策だけでは効果が薄く、供給制約を解消するための対策が重要となります。