企業年金とプロセス責任
会社員等の老後の生活資金を確保するための企業年金において、年金資産を運用する責任者、すなわち年金運用責任者には、『受託者責任』と呼ばれる責任が課せられます。この受託者責任の中には、運用成果ではなく、運用過程の適切さを問う『プロセス責任』が含まれています。
プロセス責任とは、文字通り、年金資産の運用過程における責任を指します。つまり、運用結果が良い悪いに関わらず、手続きの適切さや法令遵守が問われるのです。仮に、優れた運用成績を上げたとしても、その過程で法令違反や不正があった場合には、プロセス責任を問われ、責任追及を受ける可能性があります。反対に、一時的に運用成績が振るわなかったとしても、適切な手順を踏んでいれば、責任を問われないこともあります。
なぜこのような責任が重視されるのでしょうか。それは、年金資産の運用は長期的な視点で行われるべきものだからです。短期的な市場の変動に左右されず、将来の年金受給者の利益を守るためには、堅実で、揺るぎない運用プロセスを確立することが何よりも重要なのです。目先の利益にとらわれず、長期的な視点に立った運用を行うための仕組み作り、そして、その仕組みが正しく機能しているかを確認すること。これこそがプロセス責任の核心であり、年金運用を行う上で求められる責任の本質と言えるでしょう。