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先物取引

先物取引:未来への投資

先物取引とは、将来のある時点で、あらかじめ決めた価格で、特定の品物を売買する約束をする取引のことです。この将来の時点を限月と呼びます。 現時点では品物の受け渡しは行わず、将来の約束に基づいて売買を行う点が特徴です。 例えば、ある会社の社長が、三か月後に商品を作るために必要な材料を今のうちに一定量、一定の価格で購入する約束をするとします。これが先物取引です。三か月後には、約束した価格で材料を受け取ることができます。もし三か月後に材料の価格が上がっていたら、社長はあらかじめ低い価格で材料を手に入れることができたので、得をします。逆に、三か月後に材料の価格が下がっていたら、社長は損をしてしまいます。 先物取引の対象となる品物は様々です。原油や金、とうもろこしなどの農産物、さらには株価指数なども取引されています。これらの品物の将来の価格がどうなるかを予測し、売買の約束をします。 先物取引は、主に二つの目的で使われます。一つは、将来の価格変動による損失を防ぐことです。例えば、豆腐屋さんが大豆の価格が将来上がることを心配しているとします。豆腐屋さんは、将来の限月で大豆を買う約束をしておけば、価格が上がっても約束した価格で大豆を手に入れることができます。もう一つは、価格変動を利用して利益を得ることです。例えば、小麦の価格が上がると予測した人が小麦を買う約束をしておけば、実際に価格が上がれば、その差額が利益になります。 株の売買とは異なり、先物取引では品物をずっと持ち続ける必要はありません。約束した期日、つまり限月が来たら、自動的に取引が決済されます。つまり、実際に品物を売買するのではなく、価格の差額をやり取りするだけで取引が完了するのです。将来の価格を予測し、今の価格との差額で利益を狙う取引と言えるでしょう。
先物取引

先物オプション取引入門

先物オプションは、将来のある時点で、あらかじめ決めた値段で特定の品物や権利(例えば、株、債券、通貨、商品など)の先物契約を売買する権利のことです。この権利を買うためには、ある程度の費用(プレミアム)を支払う必要があります。この先物契約は、将来の価格変動による損失を防いだり、逆に利益を得るために使われます。 先物オプションには、買う権利であるコールオプションと、売る権利であるプットオプションの二種類があります。コールオプションは、将来価格が上がると予想した時に買います。もし予想通り価格が上がれば、権利を行使して安く買い、市場で高く売って利益を得られます。逆に価格が下がった場合は、権利を行使せずに済み、損失は支払ったプレミアムの分だけです。 プットオプションは、将来価格が下がると予想した時に買います。もし予想通り価格が下がれば、権利を行使して市場で安く買い、高く売る権利を使って利益を得られます。逆に価格が上がった場合は、権利を行使せず、損失はプレミアムの分だけですみます。 例えば、あなたが小麦を作る農家だとします。将来、小麦の価格が下がることを心配しているとしましょう。この時、プットオプションを買うことで、将来価格が下がった場合でも、あらかじめ決めた値段で小麦を売る権利を確保できます。これにより、価格下落による大きな損失を防ぐことができます。 また、先物オプションを使うと、少ないお金で大きな売買を行うこともできます。これは、てこの原理のように小さな力で大きな物を動かすような効果で、大きな利益を狙うことができます。しかし、この効果は良い面ばかりではありません。価格の動きが予想と反対だった場合、大きな損失が出る可能性もあるため、注意が必要です。先物オプションで売買を行う際は、市場の動きや危険性をよく理解し、適切な計画を立てることが大切です。
先物取引

先渡取引:将来の価格変動リスクを管理

先渡取引とは、将来のある特定の日に、あらかじめ決めておいた価格で、特定のものを売買する約束をする取引のことです。将来の価格変動リスクを避けるために利用されることが多く、様々な商品や金融資産が対象となります。例えば、コーヒー豆や原油などの商品、あるいは株式や債券などの金融資産が挙げられます。 具体的な例を挙げると、コーヒーショップの経営者が、将来のコーヒー豆の価格上昇を心配しているとします。この経営者は、コーヒー豆の生産者と先渡取引を結ぶことで、将来の価格上昇によるコスト増加を避けることができます。具体的には、将来のある日に、例えば半年後に、特定の量のコーヒー豆を、現在の価格で買う約束を生産者と交わします。もし半年後に実際にコーヒー豆の価格が上がっていたとしても、既に約束した価格で購入できるので、コスト増加の心配はありません。 反対に、コーヒー豆の生産者は、将来のコーヒー豆の価格下落を心配しているとします。この生産者は、先渡取引を利用することで、一定の価格での販売を約束することができます。つまり、半年後にコーヒー豆の価格が下がっていたとしても、既に約束した価格でコーヒー豆を売ることができるため、価格下落による損失を避けることができます。このように、先渡取引は買い手と売り手の双方にとって、将来の価格変動リスクを管理する有効な手段となります。 先渡取引は、取引所などの公的な市場を通さず、当事者間で直接行われる相対取引です。そのため、取引条件を自由に設定できるというメリットがあります。例えば、取引するものの量や質、受け渡し日、支払い方法などを、当事者間で自由に話し合って決めることができます。この柔軟性は、先渡取引の大きな魅力の一つです。しかし、当事者間で直接取引を行うということは、取引相手が約束を守らない可能性、つまり信用リスクも考慮に入れなければなりません。取引相手をよく調べて、信用できる相手かどうかを確認することが重要です。また、契約内容を明確に文書化しておくことも、トラブルを防ぐために大切です。
経済知識

バイラテラル・ネッティングで決済を効率化

会社同士の金銭のやり取り、特に売買代金の決済は、会社の活動において欠かせない大切な仕事の一つです。現代の会社は、多くの取引先と日々複雑な取引を行っています。一つ一つの取引を個別に処理していくのは、非常に時間と手間がかかります。それぞれの取引ごとに請求書を作成し、送付し、入金を確認する作業は、担当者の大きな負担となっています。さらに、取引ごとに銀行振込を行うと、その都度手数料が発生し、会社にとって大きなコストとなります。 このような状況の中、決済にかかる手間とコストを減らす方法として、「バイラテラル・ネッティング」と呼ばれる方法が注目を集めています。「バイラテラル・ネッティング」とは、簡単に言うと、二つの会社の間で行われた複数の取引をまとめて計算し、差し引きした金額だけを支払う方法です。例えば、A社がB社に100万円の製品を販売し、同時にB社から50万円の部品を購入した場合、個別に決済を行うと二回の手続きと手数料が発生しますが、「バイラテラル・ネッティング」を利用すれば、A社はB社に差額の50万円を支払うだけで済みます。これにより、決済金額が小さくなるだけでなく、事務作業も大幅に簡素化されます。 「バイラテラル・ネッティング」を導入することで、会社は貴重な時間と人手を他の重要な業務に振り向け、業務効率を向上させることができます。また、手数料の削減は、会社の利益向上にも貢献します。しかし、この方法にはメリットだけでなく、デメリットや導入時に注意すべき点も存在します。例えば、システム導入のコストや、取引先との合意形成、相殺対象となる取引の範囲などを事前にしっかりと検討する必要があります。本稿では、これから「バイラテラル・ネッティング」の仕組みやメリット、デメリット、導入時の注意点などを具体例を交えながら分かりやすく説明していきます。