ケインズ学派

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経済知識

ケインズと古典:経済学の巨人対決

経済の全体像を捉え、その動きを解き明かそうとする学問分野、それが経済学です。この経済学の中でも、特に国全体のお金の動きやものの流れに着目したものをマクロ経済学と呼びます。マクロ経済学には、大きく分けて二つの有力な考え方があります。 一つは、経済学の父とも呼ばれるアダム・スミスを起源とする古典派です。古典派は、市場には「見えざる手」が働き、個人個人が自分の利益を追求することで、結果として社会全体にとって良い状態が生まれると考えます。まるで、誰かが指揮をとっているかのように、需要と供給がバランスし、最適な資源配分が実現するというのです。そのため、政府の介入は市場メカニズムを歪め、かえって経済を悪化させると考え、自由放任を重視します。 もう一つは、世界恐慌という未曾有の経済危機の中で登場した、ジョン・メイナード・ケインズが提唱したケインズ派です。ケインズ派は、市場は必ずしも自動的に調整されるわけではないと考えます。不況時には、人々の消費や企業の投資意欲が冷え込み、需要が不足することで、生産や雇用が減少するという悪循環に陥ることがあると指摘します。このような状況では、政府が積極的に財政支出や金融政策を行い、需要を創出することで、経済を立て直す必要があると主張します。 古典派は市場の力を信じ、政府の役割は最小限に抑えるべきだと考えますが、ケインズ派は市場の失敗を認め、政府による適切な介入が必要だと考えます。この二つの学派の考え方の違いは、現代経済における様々な政策議論の根底にあります。それぞれの学派の主張を理解することは、経済の動きを理解し、将来を予測する上で非常に重要と言えるでしょう。
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経済学の様々な流派

お金に関する学問、経済学は、社会の中で資源がどのように分けられ、物やサービスが作られ、使われるのかを学ぶ学問です。この広い学問の世界には、物事への取り組み方や理論の作り方、経済の出来事に対する解釈などが違う様々なグループがあります。これらを私たちは「学派」と呼びます。学派とは、特定の経済学者が考えた理論を支持し、その理論を使って経済の出来事を分析したり、政策について提案したりする経済学者たちの集まりのことです。 学派は、時代の流れや社会の状態、新しい発見などによって常に変わり、発展してきました。例えば、かつては国の経済活動を管理することが良いと考えられていた時代もありましたが、その後、市場の力を重視する考え方が主流になった時期もあります。これは、社会の変化や経済の動きに合わせて、学派の考え方も変わってきたことを示しています。どの学派の理論が絶対に正しいということはありません。それぞれの学派がそれぞれの見方を持っていることで、経済学全体がより豊かになっていると言えるでしょう。音楽で様々な楽器がそれぞれの音色を奏でることで、美しいハーモニーが生まれるように、経済学も様々な学派がそれぞれの考え方を主張することで、より深い理解に繋がるのです。 経済学の進歩は、様々な学派が互いに競い合い、高め合うことで支えられています。一つの学派だけにこだわらず、色々な学派の考え方を理解することで、経済の出来事をより多角的に、つまり様々な角度から見ることができるようになります。これは、まるで地図を読むように、一つの地図だけでなく、地形図や天気図など、複数の地図を組み合わせて見ることで、より正確に目的地までの道のりを把握できるようになるのと同じです。ですから、経済学を学ぶ際には、様々な学派の考え方に触れ、それぞれの長所や短所を理解することが大切です。
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マクロ経済学入門:二大学派の考え方

暮らしに関わるお金の流れ全体を掴むには、経済全体を大きなかたまりとして捉えることが大切です。これを専門的に扱うのが、経済学の中の大きな分野の一つであるマクロ経済学です。私たちの暮らしに直結する経済の成長、ものの値段の上がり下がり、仕事の増減といった現象を理解する上で、マクロ経済学は欠かせません。 一人一人の家計や、一つ一つの会社の活動を細かく見るミクロ経済学とは違い、マクロ経済学は国全体、あるいは世界全体の経済活動を大きな視点で見て、その仕組みを明らかにしようとします。具体的には、国の生産活動全体を金額で表した国内総生産、ものの値段の全体的な上昇率を示す物価上昇率、仕事を探している人の割合を示す失業率といった数字を使って、今の経済の状態を把握し、これからの動向を予測します。 国内総生産や物価上昇率、失業率といった数字は、様々な要因によって変化します。例えば、新しい技術が開発されて生産活動が活発化すれば、国内総生産は増加するでしょう。また、国がお金の流通量を増やせば、ものの値段が上がりやすくなり、物価上昇率が高まる可能性があります。逆に、景気が悪くなって会社の業績が悪化すると、失業率が上昇することがあります。このように、様々な要因が複雑に絡み合って経済現象は起こるため、これらの変動要因を分析することは、より良い政策を作る上で役立つ知見となります。これはマクロ経済学の重要な役割の一つです。 複雑な経済現象を理解するための最初のステップとして、マクロ経済学は必要不可欠な学問と言えるでしょう。お金の流れの全体像を掴むことで、私たちの暮らしを取り巻く経済の動きをより深く理解し、将来への備えをより確かなものにすることができるのです。