キチン循環:景気の短期波動を読み解く
景気の波には様々な長さのものがありますが、その中でおよそ40ヶ月(3年4ヶ月)周期で訪れる比較的小さな波をキチン循環といいます。この景気の小さな波は、経済学者のジョセフ・キチンにちなんで名付けられました。キチン循環は、企業における在庫投資の変動が主な要因となって生じます。
景気が上向きの局面では、消費意欲が高まり、商品の需要が増加します。企業は将来の需要増加を見越して、商品を多く生産し、在庫を積み増していきます。生産活動が活発になると、雇用も増え、人々の所得も増加します。こうして好景気が加速していくのです。しかし、過剰に在庫が積み上がると、企業は生産を抑制し、在庫調整を始めます。生産の減少は雇用の減少、所得の減少につながり、消費は冷え込みます。こうして景気は後退局面へと入っていくのです。
在庫が減ってくると、企業は再び生産を増やし始めます。そしてまた景気は上向き始め、キチン循環は一巡します。キチン循環は、このように企業の在庫投資を中心とした循環です。
キチン循環は私たちの生活にも密接に関わっています。景気が良い時は、求人が増えたり、賃金が上がったりするなど、生活も豊かになりやすいと言えます。反対に景気が悪くなると、失業が増えたり、賃金が下がったりと、生活にも影響が出ます。キチン循環は経済の小さな波ですが、私たちの暮らしにも少なからず影響を与えていることを理解しておくことが大切です。