カバー・ディール:相場変動への備え
顧客との取引で発生するリスクをうまく管理するために、証券会社は「カバー・ディール」と呼ばれる手法を用いています。これは、顧客の注文と正反対の取引を自社の勘定で行うことで、価格変動の影響を軽減するものです。
例えば、顧客が特定の株を100株買いたいと注文してきたとします。この場合、証券会社は顧客に100株を売却すると同時に、自社の勘定で同じ株を100株買い入れます。顧客に売った株と、自社で買った株が相殺されるため、証券会社自身は株価の変動リスクを負わないのです。もし株価が上がれば、顧客に売却した株で利益は得られませんが、自社で購入した株の価値が上がるため、損失も発生しません。逆に株価が下がった場合でも、顧客に売却した株で損失は発生しますが、自社で購入した株の価値が下がるため、これもまた損失を回避できます。
反対に、顧客が特定の株を100株売りたいと注文してきた場合はどうでしょうか。この場合、証券会社は顧客から100株を買い取ると同時に、自社の勘定で同じ株を100株売却します。これも同様に、顧客から買った株と自社で売った株が相殺され、株価変動のリスクを負うことなく取引を成立させることができます。株価が上がっても下がっても、証券会社自身の損益は発生しません。
このように、カバー・ディールは顧客の注文と反対売買を行うことで、証券会社自身のリスクを最小限に抑え、安定した取引を可能にする重要な手法です。顧客との取引を円滑に進めるだけでなく、証券会社自身の経営安定にも大きく貢献していると言えるでしょう。また、顧客にとっては、迅速かつ確実に取引が執行されるというメリットがあります。
カバー・ディールは、証券会社の日常業務において頻繁に利用されており、金融市場の安定性にも寄与していると言えるでしょう。