定率償却:将来を見据えた賢い会計処理
定率償却とは、企業年金において、従業員が制度導入前に働いた期間に対応する年金給付の費用、つまり過去勤務債務を分割して支払っていく方法のひとつです。過去勤務債務とは、簡単に言うと、年金制度が始まる前から会社に貢献してくれた従業員に対する年金費用を指します。制度を導入した時点で、これまでの勤務分を一括して負担する必要があるため、企業にとって大きな負担となります。そこで、この負担を少しでも軽減するために、分割して支払っていく方法が償却と呼ばれ、定率償却はその償却方法のひとつです。
定率償却の仕組みは、毎年、まだ支払っていない残高に一定の割合を掛けて、その年の支払額を決めるというものです。この割合は償却率と呼ばれ、あらかじめ会社の規則で15%以上50%以内の範囲で決められます。例えば、まだ支払っていない残高が1000万円で、償却率が20%だとすると、その年の支払額は200万円となります。そして、残りの800万円は翌年以降に支払っていきます。
具体的には、未償却残高に償却率を掛けた金額が、その年に支払う特別掛金の総額となります。特別掛金とは、過去勤務債務を償却するために支払う費用です。この総額を基に、各年の特別掛金率が計算されます。特別掛金率は、従業員の給与総額に対する特別掛金の割合を示すものです。
このように、定率償却は、未償却残高に一定の割合を掛けて償却額を算出するため、初期の償却額が大きく、償却が進むにつれて償却額が徐々に小さくなるという特徴があります。企業は、自社の財務状況などを考慮して、適切な償却率を設定する必要があります。