長期期待運用収益率:退職金への影響
会社で働く人にとって、将来受け取れる退職金は大切なものです。会社は、将来支払う退職金の今の価値を計算する必要があります。これを退職給付会計といいます。退職金を支払うため、会社は年金を運用して資産を増やそうとします。この運用で得られる利益は、将来の退職金支払額を減らす効果があります。そのため、退職給付会計では、年金資産の運用益を将来の退職金支払額から差し引くという計算を行います。
このとき、将来どれくらいの運用益が得られるかを見積もる必要があります。この見積もった値が、長期期待運用収益率です。つまり、長期間にわたって年金資産を運用した場合、どれだけの利益が得られるかという見込みを示す数字です。
長期期待運用収益率は、過去の運用実績や将来の経済見通しなどを参考に決めます。例えば、過去に平均して年5%の利益が出ていた場合、今後も同じような状況が続くと考えて5%を長期期待運用収益率とする、といった具合です。もちろん、経済環境の変化などによって、将来の運用実績は変わる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
この長期期待運用収益率は、退職給付費用の計算に直接影響を与えます。長期期待運用収益率が高ければ、将来の運用益も高いと見込まれ、その結果、退職給付費用は少なくなるからです。反対に、長期期待運用収益率が低ければ、将来の運用益も低いと見込まれ、退職給付費用は多くなるでしょう。このように、長期期待運用収益率は会社の財務状況を理解する上で重要な要素です。適切な長期期待運用収益率を設定することは、退職給付会計の信頼性を保つために欠かせません。