額面発行の基礎知識

額面発行の基礎知識

投資の初心者

先生、『額面発行』ってどういう意味ですか?よくわからないんです。

投資アドバイザー

そうだね。『額面発行』とは、株券に書いてある値段、つまり額面価格と同じ値段で新しい株を発行することだよ。例えば、1株の額面価格が100円と書いてあれば、1株100円で新しい株を発行するということだね。

投資の初心者

なるほど。額面価格と同じ値段で発行するんですね。でも、どうしてわざわざ額面価格で発行する必要があるんですか?

投資アドバイザー

いい質問だね。額面価格で発行するのは、会社の資本金の計算を簡単にするためなんだ。額面価格×発行済み株式数=資本金となるから、管理しやすいんだよ。ただ、最近は額面発行をする会社は少なくなってきているね。

額面発行とは。

株式の発行価格を、あらかじめ定められた価格と同じ額で発行することについて。

額面発行とは

額面発行とは

額面発行とは、株式を額面価格で発行することを指します。株式とは、株式会社に出資した証として発行されるもので、この株式には額面価格が表示されている場合があります。この額面価格で発行されることを額面発行といいます。かつて、この額面価格は会社の純資産価値を示す重要な指標として使われていました。会社の財産を発行済み株式数で割ることで、一株あたりの価値を算出し、それが額面価格として株券に記載されていたのです。

しかし、時が経つにつれて、額面価格と会社の実際の価値は乖離していくようになりました。会社の業績が向上し、純資産価値が増加しても、額面価格は変更されないことが多かったためです。また、額面価格が低いと、会社の価値が低く見られてしまう可能性があり、資金調達に不利になることもありました。

現在では、額面価格自体が持つ意味は薄れ、額面価格と会社の実際の価値は必ずしも一致しません。それでも、額面発行は株式発行の方法の一つとして存在しており、企業会計や投資判断において理解しておくべき重要な概念です。近年では、額面株式を発行する会社は減少傾向にあり、多くの会社が無額面株式を発行しています。無額面株式とは、額面価格が設定されていない株式のことです。無額面株式を発行することで、株主にとって分かりやすく、資金調達も容易になります。

額面株式と無額面株式の違いを理解することは、会社の財務状況を把握する上で重要です。額面株式の場合、額面価格を下回る価格で発行することは法律で禁止されています。一方、無額面株式の場合、発行価格は自由に設定できます。そのため、会社の資金需要に応じて柔軟に資金調達を行うことが可能です。投資家は、額面株式と無額面株式の違いを理解した上で、投資判断を行う必要があります。

項目 額面株式 無額面株式
額面価格 設定されている 設定されていない
発行価格 額面価格以上 自由に設定可能
会社の価値との関係 かつては会社の純資産価値を示す指標だったが、現在では必ずしも一致しない 会社の価値を直接反映するものではない
資金調達 額面価格が低いと資金調達に不利になる場合がある 柔軟な資金調達が可能
現在の状況 発行する会社は減少傾向 多くの会社が発行

額面発行のメリット

額面発行のメリット

株式を発行する方法には、いくつか種類がありますが、その中でも「額面発行」は発行手続きの簡素さが大きなメリットです。額面発行とは、株式にあらかじめ一定の価格(額面価格)を設定して発行する方法です。この額面価格があ lらかじめ決まっているため、発行する際に複雑な価格設定の手間を省くことができます。発行企業にとっては、時間と労力を節約できるため、資金調達をスムーズに行う上で大きな利点となります。

また、額面発行は株主にとってもメリットがあります。株式の価値が分かりやすいという点です。額面価格を基準として市場価格と比較することで、株式が割安か割高かを判断しやすくなります。投資判断を行う上で、分かりやすい指標となるため、特に株式投資に慣れていない初心者にとっては、額面価格の存在は投資判断をサポートする安心材料となるでしょう。市場価格が額面価格を大きく上回っている場合は、企業の業績が良好である、あるいは将来の成長性が見込まれていると判断できます。逆に、市場価格が額面価格を下回っている場合は、企業の業績が悪化している、あるいは将来の業績に不安があると判断できます。

しかし、額面価格だけで投資判断を行うのは危険です。額面価格と企業の実際の価値は必ずしも一致するとは限らないからです。額面価格はあくまで株式の発行時に設定された価格であり、企業の業績や将来の見通しを反映しているとは限りません。例えば、業績が好調で将来の成長性が高い企業であっても、額面価格が低い場合があります。逆に、業績が悪化している企業であっても、額面価格が高い場合があります。そのため、額面価格だけに注目するのではなく、他の指標も合わせて総合的に判断することが重要です。例えば、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)といった指標を参考にしたり、企業の財務状況や事業内容を分析したりすることで、より正確な投資判断を行うことができます。

額面発行は、発行企業と株主の双方にとってメリットがある発行方法ですが、投資判断を行う際には、額面価格だけでなく他の指標も合わせて総合的に判断することが重要です。

項目 説明 メリット デメリット/注意点
額面発行 株式にあらかじめ一定の価格(額面価格)を設定して発行する方法
  • 発行手続きが簡素
  • 株主にとって株式の価値が分かりやすい
額面価格だけで投資判断を行うのは危険
発行企業側のメリット 時間と労力の節約、資金調達をスムーズに行える
株主側のメリット 額面価格を基準として市場価格と比較することで、株式が割安か割高かを判断しやすい
市場価格 > 額面価格 企業の業績が良好、または将来の成長性が見込まれる
市場価格 < 額面価格 企業の業績が悪化、または将来の業績に不安

額面発行のデメリット

額面発行のデメリット

株式を発行する際に、あらかじめ定められた価格(額面価格)で発行する方法を額面発行と言います。額面発行には、資金調達の柔軟性に欠けるという大きなデメリットが存在します。

まず、市場の状況に合わせて価格を調整することが難しい点が挙げられます。株式市場全体が好調で、投資家の需要が高い状況では、発行会社の業績も良好であれば、株価は額面価格を上回る可能性があります。このような場合、額面発行では市場の実勢価格よりも低い価格で株式を発行することになるため、会社としては本来得られるはずの資金を逃してしまうことになります。いわば、商品の値段を安く設定しすぎて、本来得られるはずの利益を逃しているようなものです。

逆に、市場が低迷している局面では、株価が額面価格を下回る可能性があります。このような状況で額面発行を行うことは難しく、資金調達自体が困難になる可能性があります。市場で売れ筋ではない商品を、無理に高い値段で売ろうとしても買い手がつかないのと同じです。

さらに、額面発行は株主にとってもリスクとなります。市場価格が額面価格を下回る、いわゆる額面割れが発生すると、株主は損失を被る可能性があります。例えば、1株あたり100円の額面価格で発行された株式を1000株購入した場合、投資額は10万円です。しかし、市場価格が1株あたり50円に下落すると、保有株式の価値は5万円にまで下がり、5万円の損失が発生します。

このようなデメリットを避けるため、近年では額面価格を定めない無額面株式を発行する会社が増えています。無額面株式であれば、市場の状況に合わせて柔軟に発行価格を設定できるため、会社はより多くの資金を調達することができ、株主も額面割れのリスクを回避できます。そのため、投資家は額面株式と無額面株式の違いを理解し、投資判断を行う際には慎重に見極める必要があります。

項目 額面発行 無額面発行
価格設定 あらかじめ定められた額面価格で発行 市場の状況に合わせて柔軟に価格設定
市場好調時の影響 実勢価格より低い価格で発行となり、資金調達の機会損失が発生 市場価格に合わせて高い価格で発行可能
市場低迷時の影響 額面価格を下回る可能性があり、資金調達困難 市場価格に合わせて低い価格で発行可能
株主へのリスク 額面割れのリスクあり 額面割れのリスクなし
資金調達の柔軟性 低い 高い

無額面株式との違い

無額面株式との違い

株式投資を考える上で、株式の種類を理解することは基本であり、大変重要です。株式には、かつて主流であった額面株式と、現在主流の無額面株式が存在します。この二つの大きな違いは、文字通り株券に額面価格が記載されているかどうかです。

額面株式とは、株券にあらかじめ決められた価格(額面価格)が記載されている株式のことです。例えば、額面価格が100円の株式を1000円で発行した場合、100円は資本金に、残りの900円は資本剰余金として計上されます。一方、無額面株式には額面価格が記載されていません。そのため、発行価格のすべてが資本金に組み入れられます。

この違いにより、資金調達の柔軟性に大きな差が生じます。額面株式の場合、発行価格は額面価格を下回ることができません。仮に会社の業績が悪化し、株価が額面価格を下回る、いわゆる額面割れを起こすと、増資を行うことが難しくなります。なぜなら、額面価格より低い価格で株を発行することが法律で禁止されているからです。しかし、無額面株式であればこのような制限がなく、会社の状況に合わせて柔軟に資金調達を行うことができます。これが、近年多くの会社が無額面株式を採用している大きな理由の一つです。

また、株主の立場からも、額面割れの心配がない無額面株式は、安心して投資できるというメリットがあります。額面株式の場合、額面割れを起こすと、投資した金額よりも株の価値が下がる可能性がありますが、無額面株式にはそのリスクがありません。このように、額面株式と無額面株式には、資金調達の柔軟性や投資家の安心感という点で大きな違いがあります。株式投資を行う際には、これらの違いを理解した上で、適切な判断を行うことが重要です。

項目 額面株式 無額面株式
額面価格 株券に記載あり 株券に記載なし
発行価格の構成 額面価格→資本金
超過分→資本剰余金
全額→資本金
資金調達の柔軟性 低い(額面割れを起こすと増資が困難) 高い(額面割れの制限なし)
投資家の安心感 低い(額面割れのリスクあり) 高い(額面割れのリスクなし)
現在の主流

投資判断への影響

投資判断への影響

株式投資を行う上で、その銘柄が額面株式か無額面株式かということは、投資判断に影響を与える要素の一つとなり得ます。

額面株式の場合、株式には額面価格が定められています。この額面価格を基準に現在の市場価格を比較することで、その株式が割安なのか割高なのかを判断する材料の一つとして用いることができます。例えば、額面価格が100円の株式が、市場で500円で取引されている場合、額面価格と比べて市場価格は5倍となっており、割高であると判断することができます。しかし、額面価格と企業の実際の価値は必ずしも一致しません。企業の業績や将来性、市場の状況など様々な要因によって、市場価格は変動します。そのため、額面価格だけで投資判断を行うのは危険です。

一方、無額面株式の場合、額面価格が存在しません。そのため、額面価格を基準とした割安・割高の判断はできません。その代わりに、他の指標を参考に投資判断を行う必要があります。例えば、株価収益率(PER)や株主資本利益率(ROE)といった指標を用いて、企業の収益性や成長性を分析することが重要になります。PERは、株価が1株当たり利益の何倍になっているかを示す指標で、低いほど割安と判断されます。ROEは、株主が出資した資本に対して、企業がどれだけの利益を上げているかを示す指標であり、高いほど効率的に経営が行われていると判断されます。

額面株式、無額面株式のいずれの場合においても、一つの指標だけで投資判断を行うのは適切ではありません。複数の指標を組み合わせて総合的に判断する、企業の財務状況や事業内容を分析する、市場全体の動向を把握するなど、多角的な情報収集と分析が不可欠です。そして、最終的な投資判断は自己責任で行う必要があることを忘れてはなりません。

項目 額面株式 無額面株式
額面価格 あり なし
割安/割高判断 額面価格を基準に判断可能(ただし、額面価格だけで判断するのは危険) 額面価格による判断は不可。PER、ROEなどの指標を用いる
PER 指標の一つとして利用可能 重要な指標
ROE 指標の一つとして利用可能 重要な指標
投資判断 複数の指標を組み合わせて総合的に判断 複数の指標を組み合わせて総合的に判断

額面発行の将来

額面発行の将来

近年、会社の資金を集める方法として、額面のない株式が増えており、額面がついた株式は減ってきています。額面のない株式は、必要なだけのお金を集めやすく、株主にとっても都合が良いので、多くの会社で採用されています。このため、これから先、額面付きの株式はもっと減っていくかもしれません。

とはいえ、額面付き株式が完全に姿を消すとは考えにくく、いくつかの会社では引き続き使われるでしょう。額面があることで、株式投資を始めたばかりの人にも分かりやすいという利点があります。そのため、一定の需要は見込めます。

額面付きの株式には、最低発行価格が決められています。このため、会社の財産を守る役割を果たし、経営の安定につながる側面があります。また、株主にとっては、額面価格を基準に株価の変動を把握しやすいため、投資判断の材料にしやすいというメリットもあります。

一方で、額面のない株式には、資金調達の自由度が高いという大きなメリットがあります。会社の状況に合わせて、柔軟に資金を集めることができるため、成長を続ける会社にとっては特に有効です。また、株主にとっては、少額から投資しやすくなるため、より多くの人が株式投資に参加しやすくなります

投資をする際には、額面付き株式と額面なし株式のそれぞれの特徴をきちんと理解することが大切です。市場の動きをよく見て、常に新しい情報を集めることで、より確かな投資判断ができます。どちらが良い、悪いではなく、それぞれの会社の特徴や、ご自身の投資方針に合わせて選ぶことが重要です。

項目 額面あり株式 額面なし株式
発行状況 減少傾向 増加傾向
資金調達 最低発行価格あり 柔軟な資金調達が可能
株主のメリット 株価変動の把握が容易
投資初心者にも分かりやすい
少額投資が可能
投資しやすい
会社のメリット 会社の財産を守る役割
経営の安定
成長企業に有効
将来性 一定の需要あり
完全になくなることはない
主流となる可能性が高い