実物決済:信用取引の基礎知識

実物決済:信用取引の基礎知識

投資の初心者

先生、『実物決済』ってどういう意味ですか?何か難しそうでよくわからないんです。

投資アドバイザー

そうだね、少し難しいかもしれないね。『実物決済』を簡単に言うと、株の信用取引で借りたお金や株を、そのままの形で返すことだよ。例えば、お金を借りて株を買った場合、売ったお金で借金を返すだけでなく、実際に借りた株を返すこともあるんだよ。

投資の初心者

つまり、借りたお金を返すだけじゃなくて、株自体も返すってことですか?

投資アドバイザー

その通り!お金を借りて株を買った場合、その株を売って利益が出たら、売ったお金で借金を返す方法もあるけど、『実物決済』の場合は、買った株をそのまま返して取引を終わらせるんだ。現金で決済するのではなく、物(株)で決済するから『実物決済』と言うんだよ。

実物決済とは。

『実物決済』という投資用語について説明します。信用取引では、お金や株券を借りて取引を行います。この借りたお金や株券を、そのまま返すことを実物決済といいます。

実物決済とは

実物決済とは

実物決済とは、信用取引で借りたお金や株券を、借りた時と同じ形で返す方法です。

信用取引では、例えば株を買うお金を借りて株を買い、後でその株を売って得たお金で借りたお金を返す、という方法がよく使われます。これを差金決済と言います。

一方、実物決済では、借りたお金は現金で返し、借りた株は同じ種類の株で返します。

実物決済を選ぶ理由はいくつかあります

まず、買った株を長く持ち続けたい場合です。差金決済だと、期限までに株を売って決済しなければなりませんが、実物決済なら期限後も株を持ち続けることができます。

次に、特定の株を担保として使いたい場合です。

また、信用取引の期限が来た時に、株を売って利益を得るのではなく、そのまま持ち続けたい場合にも実物決済が役立ちます。

例えば、A社の株を買うお金を借りて信用取引をしたとします。期限までにA社の株価が上がれば、株を売って利益を出し、借りたお金を返すことができます。しかし、株価が下がった場合でも、実物決済を選べばA社の株を持ち続けることができます。

このように実物決済は、投資の作戦の一つとして使える場合もあります。

さらに、株主総会で発言権を持つために実物決済が使われることもあります。株主総会で発言権を持つには、株主名簿に名前が載っている必要があります。信用取引で借りた株では発言権はありません。そのため、実物決済で株を手に入れて、株主名簿に自分の名前を載せることで、発言権を得ることができます。

つまり、実物決済は投資の作戦だけでなく、株主としての権利を守るためにも役立つ方法です。

決済方法 説明 メリット 利用シーン
差金決済 借りたお金で株を買い、売却益で返済 売買差益を狙える 短期売買
実物決済 借りたお金は現金で、株は現物で返済 株の長期保有、特定株の担保利用、株主総会での発言権確保 長期投資、特定株の保有継続、株主権行使

実物決済と差金決済の違い

実物決済と差金決済の違い

株式投資には、信用取引というものがあります。信用取引では、証券会社からお金や株を借りて売買を行うことができます。この信用取引では、決済方法として大きく分けて実物決済差金決済の二種類があります。

実物決済とは、読んで字のごとく、実際に借りた物で返す決済方法です。例えば、証券会社からお金を借りて株を買った場合、その株を売って得たお金で借りたお金を返し、株を借りて株を売った場合は、買い戻した株で借りた株を返します。つまり、借りたものと同じものを返すという、分かりやすい方法です。

一方、差金決済は、売買によって発生した損益、つまり差額のみを精算する決済方法です。例えば、百万円借りて株を買い、株価が上がって百二十万円になったとします。この場合、利益である二十万円を証券会社に支払うことで決済が完了します。逆に、株価が下がって八十万円になった場合は、損失である二十万円を証券会社に支払うことになります。

このように、差金決済は少ないお金で大きな取引ができるというメリットがあります。しかし、株価の変動によって大きな損失を被る可能性もあるため、注意が必要です。実物決済の場合、現物の株を所有することになるので、株価の変動リスクはありますが、配当金を受け取ったり株主総会に出席する権利を得ることができます。また、信用取引の期限が来た時に、保有している株をそのまま持ち続けることも可能ですので、長期的な投資にも適しています。

実物決済と差金決済は、それぞれにメリットとデメリットがあります。自分の投資スタイルや目的に合わせて、どちらの決済方法を選ぶかをよく考えることが大切です。

項目 実物決済 差金決済
定義 借りたお金や株を、同じもので返す 売買による損益(差金)のみを精算
例(100万円借りて株購入) 株を売却したお金で返済
株を借りて売却した場合は、買い戻した株で返済
株価120万円:利益の20万円を支払う
株価80万円:損失の20万円を支払う
メリット 配当金、株主総会出席権利あり
長期投資向け
現物株を所有
少額で大きな取引が可能
デメリット 株価変動による大きな損失リスク

実物決済のメリット

実物決済のメリット

実物決済には、投資家の皆様にとって様々な利点があります。第一に、株券を実際に所有することになりますので、企業から配当金を受け取ったり、株主総会に出席して議決権を行使したりすることができます。これは、株価の変動差益だけを得る差金決済にはない大きな利点です。第二に、実物決済は長期の投資計画に適しています。信用取引では、決められた期間内に決済しなければなりませんが、実物決済であれば、保有株を売却する必要がなく、長期間にわたって持ち続けることができます。第三に、特定の株券を担保として用いたい場合にも、実物決済は有効です。例えば、金融機関から融資を受ける際に、保有する株券を実物決済することで担保として提供することが可能です。このように、実物決済は投資家の皆様の様々なニーズに柔軟に対応できる決済方法と言えるでしょう。特に、長期的な投資を考えている方や、特定の株券を担保に用いたいと考えている方にとっては、実物決済は大きな利点となります。

さらに、実物決済は投資家の皆様の権利を守る役割も担っています。例えば、万が一、投資先の企業が倒産した場合を考えてみましょう。信用取引で株を保有している場合は、株券を返してもらう権利がありません。しかし、実物決済で株を保有している場合は、株主としての権利を主張することができ、残った財産の分配を受けることができます。このように、実物決済は投資家の皆様の権利保護という観点からも重要な役割を果たしているのです。

実物決済の利点 説明
株主権の行使 配当金の受取や株主総会での議決権行使が可能。
長期投資への適合性 保有株を売却する必要がなく、長期間にわたって持ち続けることが可能。信用取引のような期限がない。
担保としての利用 保有株を実物決済することで、金融機関からの融資を受ける際の担保として提供可能。
投資家権利の保護 企業倒産時にも株主としての権利を主張でき、残った財産の分配を受けることが可能。

実物決済のデメリット

実物決済のデメリット

実物決済は、株や債券などの資産を実際に所有する取引手法ですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。まず、実物決済を行うには、取引する資産の代金を全額用意する必要があります。例えば、1株1000円の株を100株購入する場合、10万円の資金が必要になります。信用取引のように、証拠金を預けて取引する仕組みではないため、多額の資金が必要となるケースが多く、資金力に乏しい投資家にとっては大きな負担となる可能性があります。

次に、実物決済では、資産価格の変動リスクを全て自分で負うことになります。価格が上昇すれば大きな利益を得られますが、反対に下落した場合には、その損失を全て負担しなければなりません。信用取引であれば、差金決済を選択することで損失を限定できる場合もありますが、実物決済ではそのような仕組みはありません。そのため、価格変動が大きい資産に投資する場合、大きな損失を被る可能性があることを認識しておく必要があります。

さらに、株券や債券などの実物資産を保有する場合、保管場所を確保する必要があります。証券会社に預託することも可能ですが、その場合、保管手数料などの費用が発生することがあります。また、自宅で保管する場合には、盗難や紛失、火災などのリスクに備える必要があります。適切な保管方法を検討し、安全性を確保することが重要です。

最後に、実物決済では、取引の手間がかかる場合があります。信用取引のように、インターネットを通じて簡単に取引できる場合もありますが、実物資産の受け渡しや保管場所の確保など、手間がかかる作業が発生する可能性があります。これらのデメリットを踏まえ、自身の資金力や投資経験、リスク許容度などを考慮し、実物決済を行うかどうか慎重に判断する必要があります。特に、投資初心者の方は、十分な知識と経験を積んでから実物決済を行うことをお勧めします。

メリット デメリット
資産の所有権を持つ 取引する資産の代金を全額用意する必要がある
価格上昇時の利益は全て自分のもの 資産価格の変動リスクを全て自分で負う
株券や債券などの保管場所を確保する必要がある
取引の手間がかかる場合がある

実物決済の手続き

実物決済の手続き

実物決済とは、信用取引で借りている株券を買い戻し、現物株として自分のものにする手続きです。この手続きは証券会社ごとに多少の違いはありますが、大まかな流れは共通しています。まず、信用取引口座を開設している証券会社に実物決済の意思表示をすることから始まります。電話やインターネットを通じて連絡し、どの銘柄の株券を、どれだけの数量、決済したいかを明確に伝えましょう。

次に、証券会社から実物決済に必要な書類一式が送られてきます。必要書類には、実物決済の依頼書や株券の受け渡しを請求する書類などが含まれますが、会社によって異なる場合もありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。送られてきた書類には、必要事項を記入し、自分の名前を書き、印鑑を押します。記入漏れや押印漏れがあると手続きが遅れる可能性がありますので、注意深く確認しながら記入、押印を行いましょう。

書類の準備が整ったら、証券会社へ提出します。提出方法は郵送、窓口への持参、オンラインなど証券会社によって様々です。自分の都合の良い方法を選んで提出しましょう。書類が証券会社に届くと、内容の審査が行われます。審査で問題がなければ、いよいよ実物決済が行われます。

実物決済が完了すると、株券はあなたの名義となり、現物株として保有することになります。これで、信用取引で借りていた株券は自分のものとなり、配当金の受け取りや株主総会への参加といった株主としての権利を行使できるようになります。実物決済にかかる期間は、証券会社や銘柄、市場の状況などによって異なりますが、通常は数営業日程度で完了します。

実物決済を行う際は、事前に証券会社に問い合わせて、必要な手続きや書類、どれくらいの期間がかかるのかを確認することをお勧めします。また、実物決済にはメリットだけでなくデメリットも存在します。実物決済を行う前に、それらをしっかりと理解し、自分の投資方針に合っているかを慎重に見極めることが大切です。

ステップ 内容 方法
1. 意思表示 信用取引口座を開設している証券会社に実物決済の意思表示をする。どの銘柄の株券を、どれだけの数量、決済したいかを明確に伝える。 電話、インターネット
2. 書類受け取りと記入 証券会社から送られてくる実物決済に必要な書類一式(実物決済の依頼書、株券の受け渡しを請求する書類など)に必要事項を記入し、署名捺印する。 郵送
3. 書類提出 必要書類を証券会社へ提出する。 郵送、窓口への持参、オンライン
4. 審査 証券会社による書類内容の審査。
5. 実物決済 審査完了後、実物決済が実行される。
6. 株券の保有 株券が自分の名義となり、現物株として保有できるようになる。配当金の受け取りや株主総会への参加といった株主としての権利を行使可能。