アット・ザ・マネー:オプション取引の基礎知識

アット・ザ・マネー:オプション取引の基礎知識

投資の初心者

先生、『アット・ザ・マネー』ってどういう意味ですか?

投資アドバイザー

いい質問だね。『アット・ザ・マネー』とは、オプションを行使した時に、ちょうど損益分岐点になる状態のことだよ。例えば、100円の株を買う権利(コールオプション)があって、その権利を行使できる価格(行使価格)も100円だとする。これが『アット・ザ・マネー』の状態だね。

投資の初心者

なるほど。つまり、権利を行使した時の価格と、市場で実際に株が売られている価格が同じってことですね?

投資アドバイザー

その通り!まさにそういうことだよ。この場合、権利を行使して株を買っても、売っても利益はゼロになる。だから損益分岐点なんだ。

アット・ザ・マネーとは。

投資の世界で使われる言葉に「アット・ザ・マネー」というものがあります。これは、オプション取引において、もしも今すぐ権利を行使したとしても利益が全くでない状態のことを指します。具体的には、オプションを行使できる価格と、市場で実際に取引されている価格(元となる資産の価格)が同じになっている状態です。

用語の解説

用語の解説

権利を買う、売るといった売買ができる「権利取引」という仕組みがあります。これは、あらかじめ決めた値段で、株や債券といったものを将来の決まった日、もしくはそれより前に売買する権利を売買する取引です。この権利は「選択権」と呼ばれ、買う権利を「買う選択権」、売る権利を「売る選択権」と言います。「選択権」を買うということは、将来の価格変動に備えて、あらかじめ売買する権利を確保しておくということです。例えば、将来株価が上がると予想した場合は「買う選択権」を買います。反対に、株価が下がると予想した場合は「売る選択権」を買います。

この「権利取引」で重要な考え方が「ちょうど同じ値段」です。これは、選択権を使ったときに利益が出ない状態のことを指します。具体的には、株や債券の現在の市場価格と、選択権を使う際に基準となる価格(権利行使価格)が同じ状態です。例えば、株価が1000円の時に、権利行使価格も1000円の「買う選択権」を持っているとします。この場合、選択権を使って株を買っても、株価と権利行使価格が同じなので利益は出ません。これが「ちょうど同じ値段」の状態です。

同様に、株価が1000円の時に、権利行使価格が1000円の「売る選択権」を持っている場合も「ちょうど同じ値段」です。この状態で選択権を使って株を売っても、利益はゼロになります。つまり、「ちょうど同じ値段」というのは、選択権の価値を考える上での基準となる重要な点です。この状態から株価がどのように動くかによって、選択権の価値が上がったり下がったりします。そのため、「ちょうど同じ値段」は権利取引において、投資判断を行う上で重要な指標となります。

権利の種類 説明 予想 ちょうど同じ値段 (例)
買う選択権 将来の決まった日、もしくはそれより前に、あらかじめ決めた値段で買う権利 将来株価が上がると予想 株価1000円、権利行使価格1000円
売る選択権 将来の決まった日、もしくはそれより前に、あらかじめ決めた値段で売る権利 将来株価が下がると予想 株価1000円、権利行使価格1000円

オプションの種類

オプションの種類

金融商品の一つであるオプション取引には、大きく分けて二つの種類があります。買い手にとって、将来ある資産を特定の価格で購入する権利を「コールオプション」と言い、逆に、ある資産を特定の価格で売却する権利を「プットオプション」と言います。

コールオプションを例に考えてみましょう。あなたは100円の価格で株式を買う権利(コールオプション)を10円で取得したとします。この権利は、例えば3ヶ月後の特定日まで有効です。3ヶ月後に株価が120円に上昇した場合、あなたは100円で株を買う権利を行使することで、1株あたり20円の利益を得られます。(権利取得費用10円を引くと、最終的な利益は10円です。)しかし、もし株価が90円に下落した場合は、権利を行使する意味はありません。この場合、損失は権利取得費用である10円のみで済みます。

一方、プットオプションはコールオプションとは反対の動きをします。同じように100円の価格で株式を売る権利(プットオプション)を10円で取得したとします。3ヶ月後に株価が90円に下落した場合、あなたは100円で株を売る権利を行使し、1株あたり10円の利益を確保できます。(権利取得費用10円を引くと、最終的な利益は0円です。)しかし株価が120円に上昇した場合は、権利を行使するメリットはなく、損失は権利取得費用である10円のみとなります。

オプション取引では、権利の行使は義務ではなく、権利保有者が選択できる点が重要です。また、原資産価格と権利行使価格が等しい状態を「アット・ザ・マネー」と言います。この状態では、権利を行使しても利益は発生しません。オプションの価値は、原資産の価格変動、権利行使価格、満期日までの期間、金利、市場のボラティリティなど、様々な要因によって影響を受けます。

このようにオプション取引は、相場の上昇局面でも下落局面でも利益を狙える、柔軟性の高い投資手法と言えます。

オプションの種類 権利の内容 株価上昇時の利益/損失 株価下落時の利益/損失 権利行使
コールオプション 特定価格で買う権利 利益 (例:株価120円時、10円利益) 損失 (例:株価90円時、10円損失) 任意
プットオプション 特定価格で売る権利 損失 (例:株価120円時、10円損失) 利益 (例:株価90円時、0円利益) 任意

実例

実例

株の値上がり益を狙う権利であるコールオプションについて、具体的な例を使って説明します。ある会社の株価が今ちょうど1000円だとしましょう。あなたは、この会社の株価がこれから上がると予想して、1000円で株を買う権利、つまりコールオプションを買います。この権利を行使できる価格、1000円を行使価格といいます。今の株価と行使価格が同じなので、このコールオプションは「アット・ザ・マネー」の状態です。

もし株価が1100円に上がったら、どうなるでしょうか。あなたは1000円で株を買う権利を持っています。この権利を使って1000円で株を買い、すぐに市場で1100円で売れば、1株あたり100円の利益になります。これがコールオプションのメリットです。買った値段よりも高く売れるので、差額が利益になります。

逆に、株価が900円に下がったらどうなるでしょうか。1000円で株を買う権利はありますが、市場では900円で買えます。わざわざ高い値段で買う必要はありません。この場合は、権利を使わずに放っておけば良いのです。この場合の損失は、コールオプションを買うため払った金額だけです。

このように、アット・ザ・マネーのコールオプションは、株価の動きによって利益にも損失にもなりえます。株価が上がれば利益が得られますが、下がれば損失になります。ただし、損失はオプションの購入金額までに限定されます。株価が大きく下がっても、損失が無限に膨らむことはありません。

株価 コールオプションの状態 損益 解説
1000円 アット・ザ・マネー – コールオプション購入金額 権利行使せず、損失はオプション購入金額
1100円 イン・ザ・マネー 100円 – コールオプション購入金額 1000円で株を買って1100円で売却。差額100円が利益。
900円 アウト・オブ・ザ・マネー – コールオプション購入金額 権利行使せず、損失はオプション購入金額

他の状態

他の状態

オプション取引では、権利行使価格と原資産の市場価格の関係によって、オプションの状態を表現する様々な用語があります。中でも重要な概念として「アット・ザ・マネー」以外に、「イン・ザ・マネー」と「アウト・オブ・ザ・マネー」があります。

「イン・ザ・マネー」とは、オプションを今すぐ行使した場合に利益が得られる状態です。例えば、コールオプション(買う権利)の場合、原資産の市場価格が行使価格よりも高い状態を指します。100円で買う権利を持っているとして、市場価格が120円であれば、権利を行使して100円で買い、すぐに120円で売却すれば20円の利益が得られます。プットオプション(売る権利)の場合、原資産の市場価格が行使価格よりも低い状態が「イン・ザ・マネー」です。100円で売る権利を持っているとして、市場価格が80円であれば、権利を行使して100円で売り、すぐに80円で買い戻せば20円の利益が得られます。このように、「イン・ザ・マネー」の状態にあるオプションは、権利行使によって直ちに利益を生み出すことができるため、価値が高いとされています。

一方、「アウト・オブ・ザ・マネー」とは、オプションを今すぐ行使しても利益が得られない状態です。コールオプションの場合、原資産の市場価格が行使価格よりも低い状態です。100円で買う権利を持っているにも関わらず、市場価格が80円であれば、権利行使するメリットはありません。プットオプションの場合、原資産の市場価格が行使価格よりも高い状態です。100円で売る権利を持っているにも関わらず、市場価格が120円であれば、権利行使する意味はありません。このように、「アウト・オブ・ザ・マネー」の状態では、権利行使しても利益が出ないため、オプションの価値は権利行使価格と原資産の市場価格の差が縮まることへの期待に支えられています。

これら「イン・ザ・マネー」と「アウト・オブ・ザ・マネー」は、オプション価格を理解する上で重要な概念です。原資産の価格変動によって、これらの状態は変化し、それに伴いオプションの価値も変動します。オプション取引を行う際には、これらの状態を把握し、市場の動向を見極めることが重要です。

オプションの種類 イン・ザ・マネー アウト・オブ・ザ・マネー
コールオプション(買う権利) 市場価格 > 行使価格
例:行使価格100円、市場価格120円(20円の利益)
市場価格 < 行使価格
例:行使価格100円、市場価格80円
プットオプション(売る権利) 市場価格 < 行使価格
例:行使価格100円、市場価格80円(20円の利益)
市場価格 > 行使価格
例:行使価格100円、市場価格120円

まとめ

まとめ

オプション取引を学ぶ上で、「アット・ザ・マネー」という状態を理解することはとても大切です。これは、オプションの権利を行使できる価格(行使価格)と、実際に市場で取引されている資産の価格(市場価格)が同じ状態のことを指します。たとえば、ある会社の株価が1000円で、あなたが1000円で買う権利を持っているとしましょう。この場合、権利を行使して株を買っても、売っても利益は出ません。まさにこれがアット・ザ・マネーの状態です。

なぜこの状態が重要なのでしょうか。それは、オプションの価値が、市場で取引されている資産の価格変動に大きく影響を受けるからです。アット・ザ・マネーの状態は、利益も損失も出ていない状態ですが、今後の価格変動によって、大きな利益を生む可能性も、逆に大きな損失を生む可能性も秘めているのです。資産の価格が上がれば利益が出る可能性が高まり、逆に価格が下がれば損失が出る可能性が高まります。

オプション取引の世界には、「イン・ザ・マネー」と「アウト・オブ・ザ・マネー」という状態も存在します。イン・ザ・マネーとは、オプションを行使することで利益が出る状態です。先ほどの株の例で言えば、株価が1100円に上がった時に、1000円で買う権利を持っている状態です。100円の利益が期待できますね。一方、アウト・オブ・ザ・マネーとは、オプションを行使しても利益が出ないどころか、損失が出る状態です。株価が900円に下がった時に、1000円で買う権利を持っている状態です。この権利を行使しても損をするだけなので、行使しない方が良いでしょう。

これらの3つの状態を理解することは、オプション取引の全体像を掴む上で非常に重要です。オプション取引は、うまく使えば大きな利益を得ることができますが、同時に大きな損失を被る可能性も持っています。リスクとリターンをよく理解し、それぞれの状態に応じて適切な戦略を立てることが大切です。これらの用語や概念をしっかりと理解し、投資判断に役立てましょう。

状態 説明 例(株価1000円、行使価格1000円のコールオプション) 損益
アット・ザ・マネー 行使価格と市場価格が同じ状態 株価 = 1000円 利益も損失もない
イン・ザ・マネー オプション行使で利益が出る状態 株価 = 1100円 100円の利益
アウト・オブ・ザ・マネー オプション行使で利益が出ない状態 株価 = 900円 損失(権利行使はしない)