トラッキング・エラー:ベンチマークとのズレ
投資の初心者
先生、「トラッキング・エラー」ってよく聞くんですけど、具体的にどういう意味ですか?
投資アドバイザー
簡単に言うと、目標とするものさしと実際の値のズレ具合のことだよ。投資の世界では、運用成績が目標とする指数からどれくらい離れているかを示す指標だね。
投資の初心者
目標とするものさし…って、具体的には何ですか?
投資アドバイザー
日経平均株価やTOPIXのような株価指数のことだよ。例えば、日経平均株価と同じ値動きを目指して運用するファンドを作ったとしよう。でも、実際には全く同じには動かないよね?そのズレ具合をトラッキング・エラーで表すんだ。小さいほど、目標値に沿って運用できていると言えるんだよ。
トラッキング・エラーとは。
投資用語の「トラッキング・エラー」について説明します。これは、運用成績が目標とする指標からどれだけ離れているかを示す尺度です。積極的に運用する場合でも、指標に沿って運用する場合でも、この尺度が使われます。具体的には、運用成績と指標との差のばらつき具合を年間で見て、どれくらいズレが生じやすいかを数値で表します。例えば、トラッキング・エラーが3%というのは、運用成績と指標の差が正規分布という統計的な山の形に従うと仮定した場合、成績が指標より3%高くても低くても、その範囲内に収まる確率が約68%であることを意味します。これは統計学的に、平均値からプラスマイナス1標準偏差の範囲内に収まる確率です。
トラッキング・エラーとは
運用成績を測る上で、目標とのズレを把握することは大切です。このズレを数値化したものが、追跡誤差と呼ばれるものです。追跡誤差とは、運用している資産の組み合わせである運用資産群の成績が、目標とする指標からどれくらい離れているかを示す尺度です。
指標とは、運用資産群の成績を比べるための基準となるもので、よく知られているものとしては、日経平均株価や東証株価指数などがあります。これらの指標は、市場全体の動きを反映するものとして広く利用されています。
追跡誤差は、運用資産群の収益率と指標の収益率の差を、統計学で用いられる標準偏差という方法で計算します。標準偏差とは、データのばらつき具合を表す数値です。追跡誤差が大きいほど、運用資産群の成績が指標から大きく離れる可能性が高いことを示しています。
具体的な計算方法としては、まず一定の期間における運用資産群の収益率と指標の収益率の差を計算します。この計算を複数の期間にわたって行い、それぞれの期間における差を記録します。そして、これらの差のばらつき具合を標準偏差として計算することで、追跡誤差を求めます。
追跡誤差は、運用資産群の運用方針や危険度の管理において重要な指標となります。追跡誤差が小さいということは、運用資産群が指標に沿って安定的に推移していることを示し、危険度が低いと考えられます。逆に、追跡誤差が大きいということは、運用資産群の成績が指標から大きく乖離する可能性があり、危険度が高いと考えられます。追跡誤差を見ることで、運用資産群の運用状況を的確に把握し、より効果的な運用を行うことができます。
項目 | 説明 |
---|---|
追跡誤差 | 運用資産群の成績が、目標とする指標からどれくらい離れているかを示す尺度 |
指標 | 運用資産群の成績を比べるための基準(例:日経平均株価、東証株価指数) |
標準偏差 | データのばらつき具合を表す数値。追跡誤差の計算に利用される。 |
計算方法 | 1. 一定期間における運用資産群の収益率と指標の収益率の差を計算 2. 複数の期間にわたって差を記録 3. 差のばらつき具合を標準偏差として計算 |
評価 | 追跡誤差が小さい:指標に沿って安定的に推移、危険度が低い 追跡誤差が大きい:指標から大きく乖離する可能性、危険度が高い |
計算方法と解釈
投資における成果の評価は、目標との比較によって行われます。この目標となる指標の一つにベンチマークがあり、よく似た投資対象の平均的な成績を表します。このベンチマークと、実際の投資成果との差を測る指標の一つに「追跡誤差」があります。
追跡誤差は、ある期間における投資の成果とベンチマークとの差を統計的に処理したものです。具体的には、一年間の成果のばらつきを数値化し、年率に換算することで求めます。例えば、追跡誤差が3%と示された場合、一年間の投資成果とベンチマークとの差が、プラスマイナス3%の範囲内に収まる可能性が高いことを意味します。
この確率は約68%とされていますが、これは統計学の考え方を利用しています。統計学では、データが平均値の周りに左右対称に分布していると仮定した場合、データ全体の約68%が平均値からプラスマイナス1標準偏差の範囲に収まるとされています。追跡誤差は、まさにこの標準偏差を年率に換算した値に相当します。
追跡誤差が小さい場合、投資の成果がベンチマークに近似していることを示します。つまり、平均的な投資と同じような成果が得られていると解釈できます。反対に、追跡誤差が大きい場合、投資の成果がベンチマークから大きく離れていることを意味し、平均とは異なる成果が出ていると判断できます。
ただし、追跡誤差が小さいことが常に良いとは限りません。投資の世界では、平均を上回る成果を目指すことが重要であり、そのためには、ある程度の独自性が必要です。この独自性が、ベンチマークとの差、つまり追跡誤差を生み出す要因となります。追跡誤差が小さすぎると、平均的な成果しか得られない可能性が高く、大きな利益を得る機会を逃してしまうかもしれません。したがって、追跡誤差の大きさだけでなく、それによって得られる利益とのバランスを考えることが大切です。
項目 | 説明 |
---|---|
ベンチマーク | 似た投資対象の平均的な成績 |
追跡誤差 | 投資成果とベンチマークの差を統計的に処理し年率換算した値。標準偏差に相当。 |
追跡誤差 3% の意味 | 年間投資成果とベンチマークの差が ±3% の範囲に収まる確率が約68% |
追跡誤差が小さい場合 | 投資成果がベンチマークに近く、平均的な成果 |
追跡誤差が大きい場合 | 投資成果がベンチマークから離れ、平均とは異なる成果 |
追跡誤差の理想 | 小さすぎると平均的な成果しか得られない可能性も。利益とのバランスが大切。 |
活用事例
運用成績が指標と同じ動きをするように目指す運用方法では、指標とのずれを小さくすることが大切です。このずれのことを追跡誤差といいますが、追跡誤差が小さいほど、運用がうまくいっていると考えられます。例えば、日経平均株価と同じように動くことを目標とする運用では、日経平均株価とのずれが小さいほど、運用目標に近づいていることになります。
逆に、指標を上回る利益を狙う運用方法では、ある程度の追跡誤差は許されます。なぜなら、指標と全く同じ動きでは、指標以上の利益を得ることができないからです。ただし、指標とのずれが大きすぎると、それだけ損失を出す危険も大きくなるため、追跡誤差は適切な大きさである必要があります。例えば、日経平均株価を上回る利益を狙う運用では、日経平均株価との間に多少のずれがあっても問題ありませんが、ずれが大きすぎると、大きな損失を出す可能性も高くなります。
追跡誤差は、運用責任者の成績を評価する際にも役立ちます。指標を大きく上回る利益を出していたとしても、追跡誤差が非常に大きい場合は、危険をうまく管理できていないと判断されることがあります。逆に、指標を下回る利益しか出せていなくても、追跡誤差が小さい場合は、市場全体の影響が大きかったと考えられることもあります。つまり、市場が大きく値下がりした時に、運用責任者が損失を小さく抑えることができたのであれば、低い利益は市場のせいだと考えられるのです。
このように、追跡誤差は、運用状況を様々な角度から評価するための重要な目安となります。指標とのずれを見ることで、運用の目的が達成されているか、危険管理は適切かなどを判断する材料となるのです。
運用方法 | 追跡誤差 | 利益 | リスク | 評価 |
---|---|---|---|---|
指標と同じ動きを目指す | 小さいほど良い | 指標並 | 低い | 追跡誤差が小さいほど、運用がうまくいっている |
指標を上回る利益を狙う | ある程度許容される | 指標以上 | 高い | 追跡誤差が大きすぎると、損失リスクも高まる |
アクティブ運用とパッシブ運用
資産運用には、大きく分けて「積極運用」と「消極運用」の二つの方法があります。この二つの方法は、市場平均との連動を目指すか、それとも市場平均を上回ることを目指すかという点で大きく異なります。
消極運用は、市場全体の動きに沿って利益を得ることを目的とします。日経平均株価やTOPIXなどの市場平均を示す指標に連動した運用を行い、指標とほぼ同じ値動きになるように投資を行います。例えば、日経平均株価に連動する投資信託を購入すれば、日経平均株価が上昇すれば同じように利益が得られ、下落すれば損失となります。この運用方法では、市場平均を大きく上回る利益は期待できませんが、市場平均を下回る大きな損失が出る可能性も低くなります。また、運用にかかる手間や費用も比較的少なくて済みます。
一方、積極運用は、市場平均を上回る利益の獲得を目指します。市場の状況や将来の見通しなどを分析し、有望な個別銘柄を選別したり、投資の割合を調整したりすることで、市場平均よりも高い収益率を目指します。ただし、市場平均を上回る利益を狙う分、市場平均を下回る損失が出るリスクも高くなります。また、専門家による調査や分析が必要となるため、運用にかかる手間や費用も多くなります。
どちらの運用方法が良いかは、投資家の考え方や目標によって異なります。安定した利益を求めるなら消極運用、より高い利益を目指したいなら積極運用が適しています。また、「連動誤差」という指標は、市場平均とのずれを示すもので、消極運用ではこの誤差を小さく抑えることが重要になります。積極運用では、この誤差が大きいほど、市場平均を大きく上回る、あるいは下回る結果が出やすくなります。したがって、積極運用では、連動誤差の大きさだけでなく、その水準に見合った利益が得られているかどうかも評価する必要があります。
項目 | 積極運用 | 消極運用 |
---|---|---|
目的 | 市場平均を上回る利益の獲得 | 市場全体の動きに沿って利益を得る |
手法 | 市場分析、個別銘柄選別、投資割合調整 | 市場平均を示す指標に連動した運用 |
利益 | 市場平均を上回る可能性あり | 市場平均並みの利益 |
損失 | 市場平均を下回るリスクあり | 市場平均並みの損失 |
費用 | 高め | 低め |
連動誤差 | 大きくなる傾向 | 小さい方が良い |
向き不向き | 高い利益を目指したい人 | 安定した利益を求める人 |
限界と注意点
追跡誤差は、ある投資の組み合わせがどれくらい目標とする指標から離れているかを示す便利な道具ですが、いくつか注意すべき点があります。まず、追跡誤差は過去の情報に基づいて計算されます。つまり、未来の市場の動きを完全に予測することは不可能なため、この数値は将来を保証するものではありません。市場が大きく変動する局面では、過去のデータに基づく追跡誤差はあまり参考にならない可能性があります。
次に、追跡誤差は、目標指標との差を見るものであり、投資全体の危険度を示すものではありません。例えば、目標指標自体が大きな値動きをする場合、追跡誤差が小さくても投資全体のリスクは高い可能性があります。また、目標指標が適切でないと、追跡誤差の意味が薄れてしまいます。新興国市場への投資を先進国市場の指標と比較すると、投資対象が大きく異なるため、必然的に追跡誤差は大きくなります。これは必ずしも悪い運用をしているのではなく、比較対象が適切でないことが原因です。
追跡誤差を正しく理解するには、投資の対象、運用の方法、そして使われている目標指標の特徴などを総合的に考える必要があります。追跡誤差はあくまで参考情報の一つであり、これだけで投資の良し悪しを判断することはできません。他のリスク指標や実績を示す指標と合わせて分析することで、追跡誤差はより効果的に活用できます。追跡誤差は、目標とする指標との乖離を測る尺度であり、絶対的なリスクの大きさを示すものではないことを理解しておくことが重要です。さまざまな情報を組み合わせて、投資判断を行うようにしましょう。
追跡誤差の注意点 | 詳細 |
---|---|
過去のデータに基づく | 将来の市場を予測するものではなく、市場変動時には参考にならない可能性がある |
リスクの指標ではない | 投資全体の危険度を示すものではなく、目標指標自体が変動する場合、追跡誤差が小さくてもリスクは高い可能性がある |
目標指標の適切性 | 目標指標が適切でないと、追跡誤差の意味が薄れる。比較対象が不適切な場合、追跡誤差が大きくても悪い運用とは限らない |
総合的な判断が必要 | 投資対象、運用方法、目標指標の特徴を総合的に考えて、他のリスク指標や実績指標と合わせて分析する必要がある |