年金受給の開始時期:繰上げと繰下げ
投資の初心者
先生、『繰上げ受給』と『繰下げ受給』って、どういう意味ですか?
投資アドバイザー
簡単に言うと、年金を本来もらえる歳より早くもらうのが『繰上げ受給』、遅くもらうのが『繰下げ受給』だよ。早くもらうと金額は減って、遅くもらうと増えるんだ。
投資の初心者
なるほど。でも、どうして金額が変わるんですか?
投資アドバイザー
長生きすると、もらう期間が長くなるから金額は少なくなるし、もらう期間が短ければ、その分多くもらえるように調整されているんだよ。例えば、長生きしそうなら繰下げ、そうでないなら繰上げを選ぶ、といった考え方もできるね。
繰上げ受給、繰下げ受給とは。
公的な年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)では、本来もらえる年齢である65歳よりも早く年金を受け取ることを「繰り上げ受給」といいます。この場合、もらえる年金の額は減ります。反対に、66歳より後に年金をもらうことを「繰り下げ受給」といい、この場合はもらえる年金の額が増えます。
会社が運用する確定給付企業年金の場合、繰り下げ受給を選んで年金額を増やすことはできますが、繰り上げて早く受け取ることはできません。繰り下げで増える額は、それぞれの会社のルールで決まります。
年金受給開始年齢の柔軟性
公的年金は、老後の生活を支える大切な制度です。この制度では、受給開始年齢に柔軟性を持たせることで、一人ひとりの生活設計やお金の状況に合わせた年金受給を可能にしています。
代表的なものとして、標準の受給開始年齢である65歳より前に年金を受け始める「繰上げ受給」があります。繰上げ受給を選択すると、受給開始年齢が早まるごとに年金額は減額されます。例えば、60歳から受給開始した場合、65歳まで待つ場合と比べて、毎月受け取れる年金額は少なくなります。しかし、より早く年金を受け取ることができるため、65歳まで収入が少ない場合や、健康上の理由で働くことが難しい場合などに役立ちます。
反対に、65歳より後に受給開始時期を遅らせる「繰下げ受給」という選択肢もあります。繰下げ受給の場合、受給開始年齢を遅らせるほど、年金額は増額されます。70歳まで受給開始を遅らせると、65歳に受給を開始する場合と比べて、毎月受け取れる年金額は大幅に増加します。長く働くことができ、より多くの年金を受け取りたいと考えている人に向いています。
繰上げ受給と繰下げ受給は、どちらにもメリットとデメリットがあります。そのため、自分の状況や将来設計をよく考えて、どちらの制度を利用するか、あるいは利用しないかを選択する必要があります。老後の生活資金をしっかりと確保するためには、これらの制度についてきちんと理解し、自分に合った選択をすることが重要です。公的年金制度に関する資料や相談窓口などを活用し、情報収集を積極的に行いましょう。専門家の助言を受けることも有効な手段です。将来の安心のために、今から準備を始めましょう。
受給開始時期 | 名称 | 年金額 | メリット | デメリット | 適した人 |
---|---|---|---|---|---|
65歳より前 | 繰上げ受給 | 減額 | 早く年金を受け取れる | 年金額が少なくなる | 65歳まで収入が少ない人、健康上の理由で働くことが難しい人 |
65歳 | 標準受給 | 標準 | – | – | – |
65歳より後 | 繰下げ受給 | 増額 | 年金額が多くなる | 遅く年金を受け取る | 長く働くことができ、より多くの年金を受け取りたい人 |
繰上げ受給による減額
老齢年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から70歳までの間で開始時期を選択できます。65歳より早く、つまり60歳から64歳までの間に年金の受け取りを開始することを「繰上げ受給」といいます。繰上げ受給には、生活資金の確保などのメリットがある一方、受け取る年金額が減額されるというデメリットも存在します。
減額の割合は、受給開始年齢が65歳より何ヶ月早いかによって決まります。具体的には、1ヶ月早く受け取るごとに0.5%の減額となります。例えば、1年(12ヶ月)早く受け取る場合は、0.5% × 12ヶ月 = 6%の減額となります。2年早く受け取る場合は、0.5% × 24ヶ月 = 12%の減額です。このように、早く受け取り始めるほど、年金額の減額率は大きくなります。
繰上げ受給を選択すると、確かに早くから年金を受け取ることができますが、生涯にわたって受け取る年金の総額は、65歳から受け取る場合と比べて少なくなります。これは、減額された年金額を長期間受け取ることになるためです。
そのため、繰上げ受給をするかどうかは、個々の状況に合わせて慎重に判断する必要があります。例えば、健康状態に不安があり、長生きできない可能性が高いと考える場合は、繰上げ受給を選択することで、生きている間に受け取れる年金の総額が多くなる可能性があります。また、退職後の生活資金が不足しており、すぐにまとまったお金が必要な場合にも、繰上げ受給は有効な手段となるでしょう。
反対に、健康状態が良好で長生きする可能性が高い場合や、他の収入源が確保されている場合は、65歳以降に年金受給を開始する方が、生涯にわたって受け取れる年金の総額は多くなります。将来の生活設計や収入、支出、健康状態などを総合的に考慮し、最適な受給開始時期を選択しましょう。
受給開始年齢 | 減額率 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
60歳~64歳 (繰上げ受給) | 1ヶ月につき0.5%減額 (例: 64歳開始→6%減額, 63歳開始→12%減額) | 早期に生活資金を確保できる | 生涯の受給額が減少する |
65歳 | なし | 標準的な受給 | – |
66歳~70歳 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
繰下げ受給による増額
公的年金は、受給開始時期を自分で選ぶことができます。受給開始年齢を遅らせると、毎月の年金額が増える仕組みになっています。これを繰下げ受給といいます。標準的な受給開始年齢である六十五歳より一年遅らせるごとに、年金額は八・四パーセント増えます。これは、一月あたりでは〇・七パーセントの増額に相当します。つまり、一年間、受給開始を遅らせることで、一年分の年金が八・四パーセント増えるということです。
例えば、六十五歳で受給開始した場合に毎月十万円の年金を受け取れるとします。これを一年遅らせて六十六歳から受給開始すると、毎月十万八千四百円の年金を受け取れます。さらに一年遅らせて六十七歳から受給開始すると、十一万七千二百四十八円の年金となります。このように、遅らせるほどに毎月の受給額は増えていきます。最長で七十五歳まで繰下げ受給が可能です。七十五歳まで、つまり標準的な受給開始年齢である六十五歳から十年遅らせると、年金額は八十四パーセント増額されます。先ほどの例で言えば、七十五歳から受給開始すると、毎月十八万四千円の年金を受け取れる計算になります。
繰下げ受給は、長生きするほど有利な制度です。長生きすればするほど、増えた年金を受け取れる期間が長くなるからです。健康状態に自信があり、長生きする見込みの高い方は、繰下げ受給を検討してみましょう。また、七十歳以降も働く予定があり、それまでの生活資金に余裕のある方も、繰下げ受給を検討する価値があります。ただし、受給開始を遅らせた分、もらえる年金の期間は短くなるという点には注意が必要です。ご自身の状況や将来設計をよく考えて、最適な受給開始時期を選びましょう。
受給開始年齢 | 増額率 | 月額年金(例:65歳で10万円の場合) |
---|---|---|
65歳 | 0% | 100,000円 |
66歳 | 8.4% | 108,400円 |
67歳 | 17.248% (8.4% + 8.4% * 1.084) | 117,248円 |
… | … | … |
75歳 | 84% | 184,000円 |
公的年金と企業年金
老後の生活資金の柱となる年金には、大きく分けて公的年金と企業年金があります。公的年金は、国民皆年金である老齢基礎年金と、会社員や公務員などが加入する老齢厚生年金の二種類から成り立っています。公的年金には、受給開始年齢を早める繰上げ受給と、遅らせる繰下げ受給の制度があります。老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに、原則として65歳から受給開始となりますが、60歳から70歳までの間で受給開始時期を選択できます。繰上げ受給を選択すると、受給開始年齢が一年早まるごとに年金額が0.7%減額されます。逆に、繰下げ受給を選択すると、一年遅らせるごとに年金額が0.7%増額されます。つまり、受給開始年齢によって、もらえる年金額が変わってくる仕組みです。
一方、企業年金は、会社が従業員のために独自に設けている年金制度で、確定給付企業年金と確定拠出年金の二種類があります。確定給付企業年金は、将来受け取れる年金額があらかじめ決まっている制度です。この制度では、繰下げ受給は可能ですが、繰上げ受給はできません。また、繰下げによって年金額が増える割合は企業によって異なります。確定拠出年金は、従業員が自ら掛け金を運用し、その運用実績に応じて将来の年金額が決まる制度です。確定拠出年金の場合、60歳から70歳までの間で受給開始時期を自由に選べます。ただし、繰上げや繰下げの概念はなく、受給開始年齢によって年金額が変わることはありません。
このように、公的年金と企業年金にはそれぞれ異なる種類があり、受給開始年齢の選択肢や年金額の変動の仕方も様々です。老後生活を安心して送るためには、それぞれの制度の特徴をしっかりと理解し、自身にとって最適な受給プランを検討することが重要です。
年金種類 | 制度 | 受給開始年齢 | 繰上げ受給 | 繰下げ受給 |
---|---|---|---|---|
公的年金 | 老齢基礎年金 | 原則65歳 (60歳~70歳で選択可能) | 0.7%/年 減額 | 0.7%/年 増額 |
老齢厚生年金 | ||||
企業年金 | 確定給付企業年金 | 規定による | 不可 | 可能 (増額割合は企業による) |
確定拠出年金 | 60歳~70歳で選択可能 | なし | なし |
最適な受給開始時期の選択
老後の生活資金の柱となる公的年金。その受給開始時期は、人生設計における重要な選択です。受給開始年齢によって、毎月受け取る金額と、生涯を通じて受け取る総額が大きく変わります。 早めの受給、つまり繰上げ受給を選択すれば、より早く年金を受け取ることができます。これは、退職後すぐに収入が必要な場合や、健康上の理由で長生きに自信がない場合などにメリットがあります。しかし、毎月の受給額は減額されるため、生涯を通じて受け取る総額は少なくなってしまう可能性があります。
一方、受給開始を遅らせる繰下げ受給を選択した場合、毎月の受給額は増額されます。長生きするほど、生涯で受け取る総額も大きくなるため、より豊かな老後生活を送ることができる可能性が高まります。健康に自信があり、長生きが見込まれる場合や、退職後も働く予定があり、すぐに年金収入を必要としない場合は、繰下げ受給が有利となるでしょう。
最適な受給開始時期は、人それぞれ異なります。家族構成や健康状態、経済状況、今後の生活設計などを総合的に考慮する必要があります。例えば、配偶者の有無や収入、持ち家か賃貸か、子供への教育資金の有無など、様々な要素が影響します。また、将来の物価上昇や金利変動なども見据え、慎重に検討することが大切です。
公的年金制度に関する詳しい情報は、自治体の窓口や年金事務所、関連機関のホームページなどで入手できます。様々な資料を参考にしたり、専門家へ相談したりしながら、自分にとって最適な受給開始時期をしっかりと見極めましょう。
受給開始時期 | メリット | デメリット | 適した人 |
---|---|---|---|
繰上げ受給 | 早くから年金を受け取れる | 毎月の受給額が減額、生涯総額も減少 | 退職後すぐに収入が必要な人、健康に不安のある人 |
繰下げ受給 | 毎月の受給額が増額、生涯総額も増加 | 受給開始が遅れる | 健康に自信があり長生きが見込まれる人、退職後も働く予定のある人 |