投資信託の償還：お金が戻ってくる仕組み

投資信託の償還：お金が戻ってくる仕組み

償還とは

投資信託を保有している方が、その一部、あるいは全部を換金することを償還と言います。分かりやすく言うと、投資信託を売却して、お金に換えることを意味します。

投資信託とは、多くの出資者から集めたお金をひとまとめにして、様々な資産（例えば、株式や債券など）に投資する商品です。集めたお金は、大きなプールのようなものだと考えてください。このプールを「信託財産」と呼びます。出資者は、このプールに出資した額に応じて、投資信託の口数という単位を保有することになります。

償還を行うということは、保有している口数を手放し、その代わりに、信託財産から現金を受け取ることを意味します。例えば、１０口保有していて５口を償還した場合、残りの口数は５口となります。そして、手放した５口分の時価に相当するお金を受け取ることができます。

投資信託は、いつでも換金できるという特徴があります。これは、預貯金と同様に、必要な時にいつでもお金に戻せることを意味し、流動性が高いと言えます。この流動性の高さは、投資信託の大きな魅力の一つです。急に資金が必要になった時でも、容易に換金できるため、安心して保有することができます。

償還請求を受けた運用会社は、信託財産の中から、請求された口数分の時価に相当する金額を支払います。信託財産は、常に変動する市場で運用されているため、償還時の価格は、購入時よりも高くなっていることもあれば、低くなっていることもあります。また、償還には手数料がかかる場合があるので、事前に確認しておくことが大切です。

償還金の計算方法

投資信託を解約する際に受け取るお金、いわゆる償還金は、どのように計算されるのでしょうか？　償還金は、投資信託の基準価額に基づいて算出されます。

まず、基準価額とは何かを理解する必要があります。基準価額は、投資信託の純資産総額を発行済みの口数で割ることで計算されます。　例えるなら、大きなケーキ（純資産総額）を、切り分ける人数（発行済みの口数）で割って、一切れの大きさ（基準価額）を決めるようなものです。

では、純資産総額とは何でしょうか？　純資産総額は、投資信託が保有する株式や債券などの資産の合計額から、運営にかかる費用や負債の合計額を差し引いたものです。　つまり、純粋に投資信託に残っている財産の合計額と言えるでしょう。

このため、基準価額は、投資信託の運用成果によって日々変動します。　運用がうまくいけば純資産総額が増え、基準価額も上昇します。逆に、運用がうまくいかないと純資産総額が減り、基準価額も下落します。

償還金は、償還する口数に償還日の基準価額を掛けて計算します。例えば、基準価額が1口あたり1,000円で、100口を償還する場合、償還金は10万円となります。

ただし、受け取る実際の金額は、この計算結果よりも若干少なくなる場合があります。　なぜなら、信託報酬などの手数料が差し引かれるからです。この手数料は、投資信託の運用や管理にかかる費用で、あらかじめ決められた料率で償還時に差し引かれます。手数料の詳細は、各投資信託の目論見書に詳しく記載されていますので、投資する前に必ず確認しておきましょう。

償還の方法

投資信託を解約し、お金を受け取ることを償還といいます。償還の手続きは、主に証券会社や銀行などの販売会社を通して行います。販売会社ごとに手続きが少し異なる場合があるので、事前に確認することが大切です。

一般的な償還の流れとしては、まず償還申込書に必要事項を記入し、販売会社に提出します。この申込書は、多くの販売会社でインターネット上や電話を通じて入手し、提出することも可能です。インターネットでの手続きは、窓口へ行く手間も省け、時間を有効に使えるので大変便利です。近年では、多くの販売会社がこの方法を導入しています。

償還の申込から実際に資金を受け取るまでには、数営業日かかるのが一般的です。ただし、投資信託の種類や販売会社によっては、これより短い期間、あるいは長い期間を要する場合もあります。そのため、事前に償還にかかる日数を販売会社に確認しておくことをお勧めします。時間に余裕がない場合や、特定の日に資金が必要な場合は、特に注意が必要です。

償還されたお金は、あらかじめ指定しておいた銀行口座に振り込まれます。この口座は、投資信託の購入時に登録したものと同じである場合が多いですが、変更したい場合は、販売会社に問い合わせる必要があります。

スムーズに償還を行うためには、事前の準備と確認が重要です。償還の方法、必要書類、手続きにかかる時間、振込口座などを、事前に販売会社に確認しておきましょう。不明な点があれば、遠慮なく販売会社に問い合わせてください。担当者が丁寧に説明してくれるはずです。

償還の注意点

投資信託の償還は、保有していた財産を換金する行為であり、いくつかの注意点があります。まず、償還を行うと保有口数が減るため、将来の運用益を得る機会が減少することを理解しておく必要があります。投資信託は、多くの場合、中長期的な保有を前提として設計されているため、短期的な売買を繰り返すと、期待する成果を得られない可能性があります。

次に、償還にかかる費用について理解しておく必要があります。投資信託によっては、償還時に手数料が発生する場合があります。この手数料は信託報酬とは異なり、都度、換金時に発生する費用です。手数料の額は、投資信託の種類や販売会社によって異なるため、事前に確認することが重要です。保有期間が短い場合、この手数料負担が運用成果に大きな影響を与える可能性があります。

さらに、償還のタイミングは慎重に検討する必要があります。市場の状況によっては、基準価額が購入時よりも下落している時期に償還を行うと、元本割れが発生する可能性があります。投資信託は価格変動リスクを伴う商品であるため、常に損失が発生する可能性を念頭に置いておくべきです。短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を行うことが大切です。

最後に、自身の投資目標やリスク許容度に合わせて、適切な償還計画を立てることが重要です。例えば、住宅購入資金や教育資金など、特定の目的のために投資信託を利用している場合は、その目標達成時期に合わせて償還計画を立てる必要があります。また、リスク許容度が低い場合は、元本割れのリスクを最小限に抑えるために、市場環境を見ながら慎重に償還のタイミングを判断する必要があります。将来のライフプランや経済状況の変化も考慮しながら、柔軟に計画を見直すことも大切です。

まとめ

投資信託の換金、つまりお金に戻す手続きは、持っている投資信託を売って現金にすることです。このお金に戻すことを「償還」と言います。償還によって受け取れるお金（償還金）は、換金する日の投資信託の値段（基準価額）をもとに計算されます。

換金を希望する時は、投資信託を買った証券会社や銀行などの販売会社に手続きが必要です。手軽に手続きできるインターネットや電話、窓口で直接手続きする方法があります。どの方法を選ぶかは、販売会社によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。

換金する際には、いくつかの注意点があります。まず、換金の手数料がかかる場合があります。この手数料は販売会社によって違いますので、事前に確認しておくことが大切です。また、株式や債券の市場全体の状況も換金価格に影響します。市場が大きく下がっている時に換金すると、損をしてしまう可能性があります。さらに、投資信託は中長期で運用することで利益が増える仕組み（複利効果）が期待できます。途中で換金してしまうと、将来得られたかもしれない利益の機会を失ってしまう可能性も考慮する必要があります。

投資信託は、短期的な利益を狙うよりも、中長期的な資産形成、つまりじっくり時間をかけてお金を増やすことを目的とした商品です。ですから、自分の投資の目標や計画に合わせて、いつ換金するのが適切なのか、よく考えて判断する必要があります。

焦らず、じっくりと腰を据えて運用を続けることで、複利効果によって、雪だるま式に資産が増えていくことが期待できます。将来の安心のため、計画的に投資信託を活用していきましょう。投資信託は、将来の生活設計を支える、心強い味方となるでしょう。