運用成績のブレ：アクティブ・リスクとは？

運用成績のブレ：アクティブ・リスクとは？

指標との差がもたらすもの

投資の世界では、目標となるものさしとして「ベンチマーク」と呼ばれるものがあります。これは、投資の成果を測るための指標であり、いわば目指すべき成果と言えるでしょう。自分の投資成果がこのベンチマークと比べてどの程度良いか悪いかによって、投資の成功かどうかが判断されます。

投資手法の中には、「アクティブ運用」と呼ばれるものがあります。この手法は、市場の平均的な成果を上回ることを目標としており、ベンチマークとは異なる投資先の選び方を行います。たとえば、市場全体に投資するのではなく、成長が見込まれる特定の会社に絞って投資するといった具合です。しかし、このような独自の選び方をすることによって、必然的にベンチマークとの差が生じます。この差は、良い方向に作用することもあれば、悪い方向に作用することもあります。つまり、市場平均を上回る可能性がある一方で、下回る可能性も秘めているのです。

このベンチマークとの差によって生じる不確実性こそが、「アクティブ・リスク」と呼ばれるものです。市場の変化にうまく対応しようとすればするほど、独自性は増し、このアクティブ・リスクも大きくなります。

投資においては、高い成果を求めるほど、大きな危険を伴うという鉄則があります。反対に、危険を小さく抑えたい場合は、得られる成果も小さくなります。これは投資における永遠の課題とも言えるでしょう。アクティブ・リスクは、まさにこの投資の難しさを体現していると言えるでしょう。ベンチマークを大きく上回る可能性がある一方で、大きく下回る可能性も併せ持つからです。アクティブ運用を行う投資家は、常にこのリスクと隣り合わせであることを忘れてはなりません。より大きな成果を得るためには、より大きなリスクを負う必要があるという、投資の真理を理解することが大切です。

ブレ幅を測るものさし

投資の世界では、目標とする成果とのズレを把握することはとても大切です。このズレを測る物差しの一つとして「追跡誤差」というものがあります。これは、運用資産の成績と、目標とする指標との差のばらつき具合を示すものです。

例えば、ある投資信託が日経平均株価を目標指標として運用しているとしましょう。この投資信託の成績が、日経平均株価と全く同じ動きをすれば、追跡誤差はゼロになります。しかし、現実はそううまくはいきません。投資信託の成績は、日経平均株価と比べて上がったり下がったりと、常に変動するものです。この変動の大きさを統計的に表したものが、追跡誤差です。

追跡誤差を計算するには、「標準偏差」という統計的な手法を用います。標準偏差とは、データのばらつき具合を示す数値です。追跡誤差が大きいということは、運用成績が目標指標から大きく離れる可能性が高いことを意味します。つまり、成績の振れ幅が大きいということです。逆に、追跡誤差が小さいということは、運用成績が目標指標に近い値で推移する可能性が高い、つまり成績の振れ幅が小さいことを意味します。

この追跡誤差は、運用成績の安定性を測る指標となります。追跡誤差が大きい運用成績は、目標指標を大きく上回る可能性もあれば、大きく下回る可能性もあります。ハイリスク・ハイリターンを狙う投資家にとっては、このような大きな振れ幅は魅力的かもしれません。一方、安定した運用を望む投資家にとっては、追跡誤差の小さい運用成績が好ましいでしょう。

多くの投資信託の運用報告書には、この追跡誤差が記載されています。投資家は、この数値を確認することで、その投資信託がどれくらいのリスクを取っているのかを把握することができます。自分の投資方針に合った投資信託を選ぶ上で、追跡誤差は重要な判断材料の一つとなるでしょう。

リスクとリターンのバランス

投資の世界では、高い収益を得るためには、ある程度の危険を伴うことが避けられません。これを「危険と収益の均衡」と呼びます。株式や債券など、どのようなものに財産を投じる際にも、この均衡を常に意識する必要があります。

市場全体の動きと同じように運用する「市場平均と同じ運用」の場合、市場全体の動きに連動した収益が期待できます。一方、市場平均を上回る収益を目指す「積極的な運用」では、市場平均とは異なる動きをすることで、より高い収益を狙います。しかし、市場平均を上回る収益を狙うということは、同時に市場平均を下回る危険も増えることを意味します。これが「積極的な運用」に伴う危険です。

この危険の大きさは、市場平均との差の大きさで測ることができます。差が小さいほど危険は小さく、差が大きいほど危険は大きくなります。自分の財産をどれくらい危険にさらせるか、どれだけの損失なら耐えられるかをよく考え、許容できる危険の範囲内で運用することが大切です。

例えば、危険をあまり取りたくない人は、市場平均との差が小さい運用を選ぶべきです。こうすることで、大きな損失が出る可能性を低く抑えられます。一方、ある程度の損失は覚悟の上で高い収益を狙いたい人は、市場平均との差が大きい運用を選ぶこともできます。

大切なのは、自分の財産や気持ち、そして将来の計画に合った運用方法を選ぶことです。危険と収益の均衡を理解し、自分に最適な方法を見つけることで、安心して財産を運用していくことができるでしょう。

手数料との兼ね合いを考える

資産運用を考える上で、運用にかかる手数料は避けて通れない問題です。特に、専門家が市場の動向を分析し、銘柄を選定する運用方法、いわゆる積極運用では、運用会社の人件費や調査費用などがかかるため、手数料は高くなる傾向にあります。一方で、市場全体の動きに連動することを目指す、いわゆる消極運用では、運用コストが抑えられ、手数料は比較的低く設定されています。
積極運用を選ぶ投資家は、高い手数料を払うだけの価値があるのかを慎重に見極める必要があります。高い運用成果を目指す積極運用では、当然ながら損失が出る可能性も高くなります。これを「積極運用リスク」と呼びます。このリスクが高いにもかかわらず、手数料も高い商品では、たとえ運用成績が良くても、手数料を差し引いた後の利益はそれほど大きくないかもしれません。
投資判断をする際の重要なポイントは、手数料と期待リターンのバランス、そしてリスクとリターンのバランスです。高い手数料を支払っても、それに見合うだけの高い収益が期待できるのか、あるいは、リスクに見合うだけの収益が見込めるのか、常に冷静に判断しなければなりません。そのためには、複数の運用会社の商品を比較検討し、それぞれの運用方針や手数料体系、過去の実績などを詳しく調べる必要があります。また、手数料が高い商品だからといって必ずしも悪い商品とは限りません。高い手数料に見合うだけの高度な分析や運用戦略が提供されている場合もあります。重要なのは、手数料の金額だけで判断するのではなく、その手数料がどのようなサービスに充てられているのかを理解することです。投資は長期的な視点で行うものです。目先の運用成績だけでなく、将来にわたって安定した収益を確保できるよう、手数料との兼ね合いをしっかりと考えて、自分に合った商品を選びましょう。

長期的な視点で考える

投資の世界では、目先の値動きに心を乱されがちです。日々の上がり下がりを見て一喜一憂するのではなく、腰を据えてじっくりと長い目で物事を考えることが大切です。これは、いわゆるアクティブ運用と呼ばれる、専門家が市場の状況を分析し、銘柄選択や売買のタイミングを積極的に判断する運用方法においても同様です。短期的な成績だけで判断せず、長期的な視点で評価する必要があるのです。

市場の状況は常に変化しています。まるで生き物のように、上がったり下がったりを繰り返すものです。そのため、短期間で見れば、市場全体の平均的な動きを示す指標、いわゆる市場平均を下回る時期がどうしても出てきます。しかし、悲観する必要はありません。長い期間で見れば、アクティブ運用が市場平均を上回る成果を上げる可能性は十分にあります。優れた運用担当者は、市場の波に乗りこなしながら、長期的に見て利益を上げるための戦略を練っています。

投資とは、種をまき、水をやり、じっくりと育てていくようなものです。芽が出なかったり、一時的に成長が止まったりすることもあるでしょう。しかし、焦らずに辛抱強く待ち続けることで、やがて大きな果実を実らせることができます。短期的な成果に一喜一憂して、慌てて種を植え替えたり、水をやり過ぎたりすると、かえってうまく育たないことがあります。大切なのは、目先の小さな変化に惑わされず、しっかりと長期的な目標を見据え、着実に投資を続けることなのです。じっくりと時間をかけて育てた木は、しっかりと根を張り、どんな嵐にも耐えられる強い木へと成長していきます。投資も同じように、長期的な視点で取り組むことで、安定した資産形成が可能となるのです。