ミクロ経済学入門:個々の経済活動を理解する
投資の初心者
先生、『微視的経済学』って、投資とどう関係があるんですか?よくわかりません。
投資アドバイザー
いい質問だね。微視的経済学は、個々の消費者や企業の行動に焦点を当てた経済学の分野だ。例えば、ある商品に需要が集中すれば価格はどうなるか、企業はどうやって価格を決めるのかなどを分析するんだよ。
投資の初心者
なるほど。でも、それが投資とどうつながるんですか?
投資アドバイザー
例えば、ある企業の株に投資しようとする時、その企業がどれくらい利益をあげそうか、将来性があるかなどを分析するよね?その分析に、微視的経済学の知識が役立つんだ。需要と供給の関係や、価格決定の仕組みなどを理解していれば、より的確な投資判断ができるようになるんだよ。
微視的経済学とは。
『小さな経済の動き』を説明する経済の考え方である『微視的経済学』について、投資との関わりを説明します。(参考資料として、経済の仕組み、経済の理論、小さな経済の仕組み【人の行動と経済のしくみ】、小さな経済の仕組み【価値と一番良い状態】)
経済学の基礎
経済学とは、限りある資源を人々の様々な望みを叶えるために、どのように使うかを考える学問です。人々の望みは無限ですが、それを満たす資源には限りがあるため、この資源の使い方を工夫することが経済活動の核心と言えます。どのように資源を配分するか、この問いを探求するのが経済学です。
経済学は大きく、ミクロ経済学とマクロ経済学の二つの分野に分かれています。ミクロ経済学は、経済を構成する個々の要素に焦点を当てます。消費者一人一人が何を買いたいのか、企業がどのように商品を作り、どのくらいの値段で売るのかといった、個々の経済活動の仕組みを分析します。例えば、りんごの値段が上がった時、消費者はどれくらいりんごの購入を減らし、みかんのような他の果物を買うのか、といった消費者の行動を分析します。また、企業がより少ない費用で多くの商品を作る方法を研究するのもミクロ経済学の役割です。
一方、マクロ経済学は、国全体、あるいは世界全体の経済活動を大きな視点で捉えます。国内の物価の上がり下がり、働く場がどれくらいあるかを示す失業率、そして国の経済全体の成長などを分析します。景気が悪化した時に、国全体でお金の流れを良くするためにどのような対策を取れば良いのかを考えるのもマクロ経済学の重要な役割です。
ミクロ経済学とマクロ経済学は、別々に存在するのではなく、互いに深く関連しています。例えば、たくさんの企業が新しい機械を導入し生産性を向上させたとします。これはミクロ経済学的な視点で見ると個々の企業の活動ですが、多くの企業が同じように行動すると、国全体の生産量が増え、経済全体が成長します。これはマクロ経済学的な視点です。このように、ミクロ経済学は経済の基礎を築き、マクロ経済学で経済全体を理解するための土台となります。
需要と供給
物の値段は、それを欲しいと思う人と、それを売りたいと思う人のせめぎあいによって決まります。これを経済学では需要と供給の関係と呼びます。
まず、需要とは、ある品物を買いたいと思う人の気持ちと、実際に買える力のことです。欲しいと思ってもお金がなければ買えませんし、お金があっても欲しいと思わなければ買いません。一般的には、物の値段が下がれば、それを買いたいと思う人が増え、需要は増えます。逆に、値段が上がれば、買いたいと思う人は減り、需要は減ります。
次に、供給とは、ある品物を売りたいと思う人の気持ちと、実際に売れる力のことです。売りたいと思っても品物がなければ売れませんし、品物があっても売りたいと思わなければ売りません。一般的には、物の値段が上がれば、それを売りたいと思う人が増え、供給は増えます。逆に、値段が下がれば、売りたいと思う人は減り、供給は減ります。
需要と供給は、市場という場所で互いに影響しあい、ちょうど良い値段と取引量が決まります。これを均衡価格と均衡取引量といいます。均衡価格は、買いたい量と売りたい量がぴったり一致する値段です。この値段であれば、品物が余ったり足りなくなったりすることはありません。
もし、ある品物の値段が均衡価格よりも高い場合、売りたい人は多いけれど買いたい人は少ないため、品物が余ってしまいます。すると、売る側は値段を下げてでも品物を売り切りたくなり、最終的には均衡価格へと向かいます。
逆に、品物の値段が均衡価格よりも低い場合、買いたい人は多いけれど売りたい人は少ないため、品物が足りなくなります。すると、買う側は少しでも多く品物を手に入れるために高い値段でも買うようになり、最終的には均衡価格へと向かいます。
このように、需要と供給のバランスは、市場の仕組みの中心となるものであり、社会全体の資源をうまく分配することに役立っています。
企業の行動
会社は、儲けをできるだけ多くすることを目指して、ものやサービスを作っています。ものやサービスを作るには、土地、働く人、お金などの材料が必要です。これらの材料を組み合わせて、商品やサービスが作られます。会社は、作る量を増やすと、売り上げは増えますが、同時に作るためのお金も増えます。そのため、会社は作る量を調整することで、売り上げから作るためのお金を引いた儲けをできるだけ多くしようとします。
また、市場での競争の激しさも、会社の行動に大きな影響を与えます。たくさんの会社があって、どの会社も値段を決める力がない市場を完全競争市場といいます。この市場では、どの会社も同じ商品を同じ値段で売るので、会社は作る量を調整することで儲けを多くしようとします。一方で、市場に会社が一つしかなく、その会社が自由に値段を決めることができる市場を独占市場といいます。独占市場では、会社は値段と作る量を調整することで儲けを多くしようとします。このように、市場の形によって会社の行動は大きく変わり、経済学では、様々な市場の形での会社の行動を分析します。
例えば、完全競争市場では、どの会社も市場の値段に影響を与えることができないため、市場で決まった値段と同じ値段で商品を売ることになります。そして、会社は作る量を変えることで儲けを調整します。一方、独占市場では、一つの会社が市場を独占しているため、会社は自由に値段を決めることができます。しかし、値段を高く設定しすぎると、買う人が減ってしまうため、会社は儲けが最大になるように値段と作る量を調整する必要があります。このように、市場の形によって会社の行動は大きく異なり、それぞれの市場の特性を理解することが重要です。
市場の種類 | 競争の激しさ | 価格決定 | 企業の行動 |
---|---|---|---|
完全競争市場 | 高い (多数の企業) | 市場で決定 (企業は価格に影響を与えられない) | 生産量を調整して利益を最大化 |
独占市場 | 低い (1社のみ) | 企業が自由に決定 | 価格と生産量を調整して利益を最大化 |
消費者の行動
私たち消費者はお財布の中身と相談しながら、最も満足できる買い物をしたいと常に考えています。限られた予算の中で、いかに自分の満足度を高めるか、これが消費行動の基本です。普段の買い物から大きな買い物まで、私たちは様々な商品やサービスの中から、自分の好みや予算に合ったものを選んでいます。
例えば、洋服を買う場面を考えてみましょう。同じようなデザインでも、値段や素材、ブランドによって私たちの満足度は変わってきます。予算が限られているならば、高価なブランド品ではなく、より安い価格で同じような満足感を得られる商品を選ぶかもしれません。また、品質にこだわる人は、多少高くても長持ちする商品を選ぶでしょう。このように、商品の価格と、それから得られる満足度を比較検討して、私たちは最終的な購入を決めています。
私たちの収入も、消費行動に大きな影響を与えます。収入が増えれば、より高価な商品やサービスを購入できるようになります。欲しい物がたくさんあっても、収入が少なければ、本当に必要な物だけを選ぶことになります。
このように、消費者の行動は、商品の価格、消費者の収入、そして商品から得られる満足度によって決まります。個々の消費者の選択が集まり、市場全体の商品の需要量が決まります。需要量と価格は密接に関係しており、価格が上がれば需要量は減り、価格が下がれば需要量は増えるのが一般的です。
さらに、消費者の好みや収入の変化も、市場全体の動きに大きな影響を与えます。例えば、ある商品が流行すると、その商品の需要は急増します。また、景気が良くなって人々の収入が増えると、消費全体が活発になります。このように、消費者の行動を理解することは、市場の仕組みを理解する上で非常に重要です。
市場の失敗
市場は、財やサービスを売買する場であり、需要と供給によって価格が決まり、資源が配分されます。多くの場合、市場はうまく機能し、人々の需要を満たしつつ、経済全体を活性化させます。しかし、市場メカニズムが常に望ましい結果をもたらすとは限りません。時に、市場だけではうまくいかない状況、すなわち「市場の失敗」が生じます。
市場の失敗には、いくつかの種類があります。まず、「外部経済効果」について考えてみましょう。これは、ある人の行動が、周りの人々に、良い、または悪い影響を与える現象です。例えば、工場が有害な煙を排出する場合を考えてみてください。工場は自社の利益のために生産活動を行っていますが、その結果、近隣住民の健康が損なわれるかもしれません。これは、工場が意図していない、周りの人々への悪影響、つまり負の外部経済効果の一例です。逆に、養蜂家が蜂蜜を生産すると、ミツバチが周りの果樹園の花粉を媒介し、果物の収穫量が増えることがあります。これは、養蜂家が意図していない周りの人々への良い影響、つまり正の外部経済効果です。
次に、「公共財」の問題があります。公園や街灯、国防などは、一度提供されると、皆が利用でき、誰かを排除することが難しい財やサービスです。また、ある人が利用しても、他の人が利用できる量に影響を与えません。このような財やサービスは、民間企業が提供するのは難しい場合があります。なぜなら、料金を徴収することが困難だからです。誰もがお金を払わなくても利用できるのであれば、進んでお金を払う人は少なくなってしまうでしょう。このような公共財は、市場メカニズムだけでは十分に供給されにくく、政府による提供が必要となるケースが多いです。
さらに、「情報の非対称性」も市場の失敗を引き起こす要因の一つです。中古車市場を例に考えてみましょう。売り手は、その車の状態について、買い手よりも多くの情報を持っています。買い手は、故障しやすい車かどうかなど、重要な情報を知らないまま購入してしまう可能性があります。このような情報の偏りは、市場取引を阻害する要因となります。このように、市場の失敗は様々な形で現れ、私たちに影響を与えています。政府による適切な対応が必要となるケースも多いでしょう。
市場の失敗の種類 | 説明 | 例 |
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外部経済効果 | ある人の行動が周りの人々に与える意図しない影響 |
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公共財 | 皆が利用でき、排除が難しく、消費が競合しない財・サービス | 公園、街灯、国防など |
情報の非対称性 | 取引当事者間で情報量に差がある状態 | 中古車市場における売り手と買い手の情報格差 |