マクロ経済学入門:二大学派の考え方
投資の初心者
先生、マクロ経済学って難しそうでよくわからないんです。古典学派とケインズ学派の違いって簡単に説明してもらえますか?
投資アドバイザー
そうだね、簡単に言うと、経済全体のお菓子の量が決まる時、何に注目するかで考え方が違うんだ。古典学派は、お菓子を作る側の力、つまり『供給』に注目する。ケインズ学派は、お菓子をほしいと思う人、つまり『需要』に注目するんだよ。
投資の初心者
なるほど!作る側とほしいと思う側で違うんですね。ということは、景気が悪くなった時は、それぞれの学派で対策も変わるんですか?
投資アドバイザー
その通り!古典学派は、作る側がもっとお菓子を作りやすいように、ルールを簡単にするとか、材料を安く手に入れやすくするといった対策を考える。ケインズ学派は、ほしいと思う人が増えるように、例えば、みんなにお金が回るように工夫する、といった対策を考えるんだ。
マクロ経済学とは。
お金の使い方や国の経済全体を扱う『大きな経済の仕組み』(●大きな経済の仕組みには、大きく分けて二つの考え方があります。●一つは、アダム・スミスという人の考えを受け継いだ古い考え方。●もう一つは、有名なイギリスの経済学者、ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)という人が始めた新しい考え方。●古い考え方は、作れる商品の量で、国の経済全体の大きさが決まると考えています。一方、新しい考え方は、買いたいと思う商品の量で、国の経済全体の大きさが決まると考えています。)について
経済の全体像を掴む
暮らしに関わるお金の流れ全体を掴むには、経済全体を大きなかたまりとして捉えることが大切です。これを専門的に扱うのが、経済学の中の大きな分野の一つであるマクロ経済学です。私たちの暮らしに直結する経済の成長、ものの値段の上がり下がり、仕事の増減といった現象を理解する上で、マクロ経済学は欠かせません。
一人一人の家計や、一つ一つの会社の活動を細かく見るミクロ経済学とは違い、マクロ経済学は国全体、あるいは世界全体の経済活動を大きな視点で見て、その仕組みを明らかにしようとします。具体的には、国の生産活動全体を金額で表した国内総生産、ものの値段の全体的な上昇率を示す物価上昇率、仕事を探している人の割合を示す失業率といった数字を使って、今の経済の状態を把握し、これからの動向を予測します。
国内総生産や物価上昇率、失業率といった数字は、様々な要因によって変化します。例えば、新しい技術が開発されて生産活動が活発化すれば、国内総生産は増加するでしょう。また、国がお金の流通量を増やせば、ものの値段が上がりやすくなり、物価上昇率が高まる可能性があります。逆に、景気が悪くなって会社の業績が悪化すると、失業率が上昇することがあります。このように、様々な要因が複雑に絡み合って経済現象は起こるため、これらの変動要因を分析することは、より良い政策を作る上で役立つ知見となります。これはマクロ経済学の重要な役割の一つです。
複雑な経済現象を理解するための最初のステップとして、マクロ経済学は必要不可欠な学問と言えるでしょう。お金の流れの全体像を掴むことで、私たちの暮らしを取り巻く経済の動きをより深く理解し、将来への備えをより確かなものにすることができるのです。
マクロ経済学 | ミクロ経済学 |
---|---|
国全体、世界全体の経済活動を大きな視点で見る | 一人一人の家計や、一つ一つの会社の活動を細かく見る |
経済の成長、ものの値段の上がり下がり、仕事の増減といった現象を理解 | 個々の経済主体の行動を分析 |
国内総生産、物価上昇率、失業率といった数字を使用 | 需要と供給、価格弾力性、費用関数といった概念を使用 |
今の経済状態を把握し、これからの動向を予測 | 市場メカニズムの解明や企業の意思決定分析 |
二大学派の対立
経済学の世界には、経済の動き方を捉え、政策のあり方を考える上で、大きく分けて二つの有力な考え方があります。一つは、アダム・スミスという経済学者の考えを土台とした古典学派で、もう一つは、ジョン・メイナード・ケインズという経済学者が唱えたケインズ学派です。この二つの学派は、経済の仕組みや政策の効果について、異なる見方を示すことが少なくありません。
古典学派は、市場における自由な取引の力を信じ、その働きを尊重することで経済はうまく調整されると考えます。彼らは、物の値段や給料は需要と供給の関係で自然と決まり、経済全体は常に完全雇用と呼ばれる状態に向かうと主張します。そのため、政府が経済に介入することは、市場の自然な働きを邪魔し、かえって経済を不安定にする可能性があると警告します。つまり、政府の役割は必要最低限にとどめるべきだと考えます。
一方、ケインズ学派は、市場の力は万能ではなく、放っておくと不況や失業といった問題が長期にわたって続く可能性があると指摘します。彼らは、人々の消費や投資といった行動は将来への見通しによって大きく左右されると考え、将来への不安が広がると消費や投資が落ち込み、経済全体が縮小してしまうと主張します。このような状況では、政府が積極的に財政支出を増やす、つまり公共事業などにお金を使うことで需要を作り出し、経済を活性化させる必要があると考えます。また、金融政策、つまり中央銀行による金利の調整も重要だと考えます。
このように、二つの学派は経済に対する考え方が大きく異なり、その対立は経済学界で長年にわたる議論の的となっています。そして、現実の経済政策にも大きな影響を及ぼし続けています。
項目 | 古典学派 | ケインズ学派 |
---|---|---|
市場の役割 | 市場の自由な取引を尊重、市場メカニズムによる調整機能を重視 | 市場の力は万能ではなく、不況や失業が長期化する可能性を指摘 |
価格・賃金 | 需要と供給で決定、経済は完全雇用に向かう | 将来への見通しで消費・投資が変動、経済縮小の可能性あり |
政府の役割 | 必要最低限に留める、介入は市場の働きを阻害 | 積極的に財政支出、金融政策で経済活性化 |
政策の重点 | 市場への介入抑制 | 財政政策、金融政策による景気調整 |
供給重視の古典学派
財やサービスを生み出す力を重視する考え方、それが供給重視の古典学派です。この学派は、経済が成長するためには、まずモノやサービスを作る能力を高めることが何よりも大切だと考えています。まるで、畑を耕し種をまくように、生産能力という土台をしっかり作ることで、豊かな実り、つまり経済成長が得られると考えるのです。
具体的には、企業がもっと活発に活動できるような政策を重視します。例えば、企業活動を制限する様々な決まり事を取り除いたり、企業が払う税金を軽くしたりすることで、企業が新しい設備に投資したり、より良い商品やサービスを生み出したりする意欲を高めます。そうすることで、より少ない労力や資源で多くのモノやサービスを生み出す、つまり生産性を向上させることを目指します。また、働く人の移動や転職をよりスムーズにすることで、より多くの人が仕事に就けるようにすることも重要だと考えています。
古典学派の人々は、市場には不思議な力があると信じています。まるで、目には見えない手によって導かれるかのように、市場での取引を通して、需要と供給のバランスが自然と取れ、経済は安定した状態に向かうと考えるのです。そのため、政府が経済にあれこれと手を出すと、かえって市場の自然な働きを邪魔し、経済成長を妨げると考えています。市場の持つ力を最大限に活かすことで、経済は力強く、そして長く続く成長を遂げることができると信じて疑いません。まるで、太陽の光を浴びてすくすくと育つ植物のように。
学派 | 考え方 | 重視する政策 | 市場への考え方 |
---|---|---|---|
古典学派 | 財やサービスを生み出す力を重視(供給重視)。生産能力の向上こそ経済成長の鍵。 |
|
市場メカニズムを重視。政府の介入は市場の働きを阻害すると考え、市場の力を最大限に活かすべき。 |
需要重視のケインズ学派
経済学には様々な考え方がありますが、その中で需要の重要性を特に強調するのがケインズ学派です。ケインズ学派は、経済活動を活発にするには、人々や企業がどれだけ財やサービスを求めているか、つまり需要が鍵だと考えます。人々が物を買わなくなったり、企業が設備投資をしなくなると、生産活動は停滞し、商品やサービスを作る必要がなくなるため、失業者が増えてしまいます。
このような不況時には、政府が積極的に景気対策を行うべきだとケインズ学派は主張します。具体的には、国が公共事業に投資して道路や橋を建設したり、国民の税金を減らすことで家計の自由に使えるお金を増やし、消費を促します。そうすることで需要を生み出し、経済の停滞を打破できると考えます。また、中央銀行による金融緩和も効果的です。金利を下げることで企業がお金を借りやすくなり、設備投資を促すことで需要を喚起します。
ケインズ学派は、市場の力は万能ではなく、放っておけば経済は安定しないと考えています。景気が過熱して物価が上がりすぎたり、逆に冷え込んで失業者が増えたりするからです。そのため、政府が経済活動に適切に介入し、需要を上手に調整することで、物価の安定と雇用の増加、そして経済の成長を実現できると考えています。まるで経済という大きな船の舵取り役は政府であるべきと説いているかのようです。需要をしっかりと管理することで、経済という船を安定した航路へと導くことができるとケインズ学派は主張しているのです。
二大学派の現在
経済学の世界には、大きく分けて二つの大きな考え方があります。一つは古典学派、もう一つはケインズ学派です。これら二つの学派は、長い間、経済学の中心的な議題をめぐって活発な議論を繰り広げてきました。
古典学派は、市場メカニズムを重視し、政府の介入は最小限に抑えるべきだと考えます。彼らは、市場は自律的に調整機能を持ち、最適な資源配分を実現すると信じています。まるで、見えざる手が経済を導いているかのように。
一方、ケインズ学派は、市場メカニズムだけでは経済は安定せず、時に政府の介入が必要だと主張します。彼らは、大恐慌のような経済危機は、市場の失敗によって引き起こされると考え、政府による財政支出や金融政策によって景気を刺激する必要があると説きました。
現代の経済学は、これらの二大学派の考え方を統合し、発展させたものと言えるでしょう。経済成長を促すには、企業の生産性を高める供給側の政策だけでなく、人々の購買意欲を高める需要側の政策も大切です。また、経済の安定には、市場の力を活かしつつ、必要に応じて政府が介入するバランス感覚が重要です。
現在の経済学者たちは、古典学派とケインズ学派の理論を批判的に吟味し、現実の経済状況に合った、より精度の高い経済モデルの構築に励んでいます。かつて対立していた二大学派の議論は、経済学の発展に大きく貢献してきたと言えるでしょう。
学派 | 市場メカニズム | 政府の介入 | 経済の安定性 | 経済政策 |
---|---|---|---|---|
古典学派 | 重視 (自律的調整機能) | 最小限 | 市場による安定 | 供給側の政策 |
ケインズ学派 | 不十分 (市場の失敗) | 必要 (財政・金融政策) | 政府による安定化 | 需要側の政策 |
現代経済学 | 市場の力を活用 | 必要に応じて介入 | 市場と政府のバランス | 供給側と需要側の政策 |
私たちへの影響
私たちの暮らしは、経済という大きな流れの影響を受けずにいることはできません。そして、この経済の流れを理解するための鍵となるのが、マクロ経済学です。マクロ経済学は、国全体の経済活動を分析する学問であり、古典学派とケインズ学派という二つの大きな考え方が存在します。
古典学派は、市場メカニズムの働きを重視し、政府の介入は最小限に留めるべきだと考えます。一方、ケインズ学派は、市場メカニズムだけでは不況から脱却できない場合、政府が積極的に介入すべきだと主張します。
これらの学派の考え方は、政府の経済政策に大きな影響を与えます。例えば、不況時に政府がとる景気対策は、まさにケインズ学派の考え方に基づいたものです。減税によって家計の自由に使えるお金を増やし、公共事業によって雇用を生み出すことで、経済活動を活発化させようとする政策です。私たちの給料や仕事の機会は、このような政策に直接左右されることがあります。
また、中央銀行の金融政策も、私たちの生活に大きな影響を与えます。中央銀行は、物価の安定を目標に、金利を調整することで経済をコントロールしようとします。金利が変わると、住宅ローンや預金の金利も変化し、私たちの資産運用や日々の買い物にも影響が及びます。
このように、マクロ経済の動きは、私たちの生活に密接に関わっています。だからこそ、経済の現状や将来の予測を理解することは重要です。新聞やテレビのニュース、インターネットで公開されている経済指標などに関心を持ち、経済の動きを常に把握することで、より良い生活設計を立てることができるはずです。マクロ経済学は、難しい専門用語が多い学問ですが、私たち一人ひとりの生活に深く関わっているということを忘れずに、日頃から関心を持つことが大切です。
学派 | 考え方 | 政策への影響 |
---|---|---|
古典学派 | 市場メカニズム重視、政府介入最小限 | – |
ケインズ学派 | 市場メカニズムだけでは不況脱却不可の場合、政府介入 | 景気対策(減税、公共事業) |
政策 | 内容 | 生活への影響 |
---|---|---|
金融政策 | 中央銀行による金利調整 | 住宅ローン、預金金利の変化 |