ケインズ経済学入門:有効需要の原理とは
投資の初心者
先生、「ケインズの考え」って難しくてよくわからないんです。簡単に説明してもらえますか?
投資アドバイザー
わかった。簡単に言うと、ケインズさんは、世の中に仕事がない人がたくさんいる時、モノを作る量は少なくなると考えたんだ。仕事がないとみんなお金がないから、あまり買い物しないよね?だから、お店もたくさんモノを作らなくてもいいんだよ。
投資の初心者
なるほど。モノが売れないから、たくさん作る必要がないんですね。でも、モノを作る量が減ると、ますます仕事がなくなってしまう気がするんですが…
投資アドバイザー
その通り!だから、ケインズさんは、国がもっとお金を使って、みんなの買い物が増えるようにすれば、モノを作る量も増えて、仕事も増えると考えたんだよ。これを『有効需要の原理』というんだ。
ケインズの考えとは。
投資に関係する言葉「ケインズの考え」について説明します。ケインズという人は、仕事がない人がたくさんいるような経済の仕組みはどうなっているのかを説明しようと、1936年に「雇用、利子、お金についての理論」という本を書きました。
ケインズは、みんなの収入が少ないと、仕事がない人が出てきて、作られる物も少なくなる、と考えました。仕事がない人がいる時の作られる物の量は、仕事がない人がいる時だけに作られる量で止まってしまう、と分析しました。そして、買いたいという気持ちの合計が、作られる物の量を決める、という考えを発表しました。この考えを「有効需要の原理」と言います。
ケインズ経済学の背景
世界恐慌という、かつて経験したことのないほどの大きな経済不況は、それまでの経済学では説明することができませんでした。当時の経済学では、市場での取引がうまくいけば、仕事を探している人は必ず仕事を見つけられると考えられていました。しかし、現実は大きく異なり、仕事がない人が街にあふれ、経済は深刻な不況に陥っていました。
このような状況の中で、ジョン・メイナード・ケインズという経済学者は、従来の経済学では説明できない問題点を指摘し、新しい経済理論を作ろうとしました。1936年に出版された『雇用・利子および貨幣の一般理論』という本は、ケインズの考えをまとめたもので、その後の経済学に大きな影響を与えました。
ケインズは、物やサービスの売買などの市場の働きだけでは、仕事を探している人が必ず仕事を見つけられる状態になるとは限らないと考えました。そして、不況から脱出するためには、国が積極的に経済活動に介入する必要があると主張しました。具体的には、国が公共事業などにお金を使うことで、仕事を作り出し、経済を活性化させるという政策を提案しました。これは、市場の働きに任せておけば経済は自然と良くなると考えていた当時の経済学者にとっては、常識を覆す革新的な考え方でした。
ケインズの登場以前は、経済不況は一時的なものと考えられ、やがて自然に回復すると信じられていました。しかし、世界恐慌の深刻な状況を目の当たりにし、ケインズは、市場の力だけでは不況から脱出できないことを確信しました。そして、国が経済に介入することで、不況を克服し、人々に仕事を提供することができると主張したのです。この考え方は、世界恐慌後の経済政策に大きな影響を与え、多くの国で採用されました。
経済学者 | 時代背景 | 従来の経済学の考え方 | 問題点 | 新しい経済理論 | 政策提言 | 影響 |
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ジョン・メイナード・ケインズ | 世界恐慌(未曾有の経済不況) | 市場での取引がうまくいけば、仕事を探している人は必ず仕事を見つけられる。 | 現実には、仕事がない人が街にあふれ、経済は深刻な不況に陥っていた。 | 市場の働きだけでは、完全雇用は達成されない。国が経済活動に介入する必要がある。 | 国が公共事業などにお金を使うことで、仕事を作り出し、経済を活性化させる。 | 世界恐慌後の経済政策に大きな影響を与え、多くの国で採用された。 |
有効需要の原理
財やサービスへの需要こそが、経済活動を左右するという考え方が、有効需要の原理です。これは、イギリスの経済学者であるケインズが提唱した経済理論の中核を成す概念です。
従来の経済学では、供給が需要を生み出すという考え方が主流でした。つまり、モノやサービスが作られれば、それに伴って人々の欲求も生まれ、消費が行われるとされていました。しかし、ケインズはこの考え方に異議を唱えました。
ケインズは、需要こそが供給を決定づけると考えました。人々が財やサービスを求める需要が十分に存在しなければ、企業は売れないと判断し、生産活動を縮小します。生産活動の縮小は、雇用の減少、ひいては所得の減少に繋がります。所得が減れば人々の購買力はさらに落ち込み、需要はさらに減少するという悪循環に陥ってしまいます。これが不況であり、大量の失業者が生まれる原因となります。
有効需要とは、実際に購買に繋がる需要のことを指します。いくら人々がモノやサービスを欲しいと思っても、お金がなければ買うことはできません。経済が停滞している時、人々は将来への不安からお金を使うことを控えがちになります。このような状況では、企業は生産を増やすインセンティブがなく、雇用も増えません。結果として不況は長期化し、経済は低迷を続けます。
有効需要の原理は、政府による経済への介入の必要性を示唆しています。不況時には、政府が公共事業などを通じて需要を創り出すことで、経済活動を活性化できるとケインズは考えました。政府支出によって雇用が生まれ、人々の所得が増えれば、消費も活発になり、経済全体の好循環が生まれるというわけです。有効需要の原理は、その後の経済政策に大きな影響を与え、世界各国で不況対策に活用されました。
項目 | 内容 |
---|---|
有効需要の原理 | 財やサービスへの需要が経済活動を左右する |
提唱者 | ケインズ |
従来の経済学 | 供給が需要を生み出す(供給側) |
ケインズの主張 | 需要が供給を決定づける(需要側) |
需要不足が生む悪循環 | 需要不足 -> 生産縮小 -> 雇用減少 -> 所得減少 -> 需要減少 -> 不況 |
有効需要とは | 購買に繋がる需要 |
不況時の状況 | 将来不安 -> 消費控え -> 企業の生産意欲減退 -> 雇用減 -> 不況長期化 |
政府の役割 | 公共事業等で需要創出 -> 経済活性化 |
政府支出の効果 | 雇用創出 -> 所得増加 -> 消費増加 -> 好循環 |
有効需要の原理の影響 | 世界各国の経済政策に影響、不況対策に活用 |
総需要の構成要素
人々の暮らし向きや国の経済活動を左右する需要の全体像、これを総需要と呼びます。経済学者のケインズはこの総需要を、消費、投資、政府支出、純輸出という四つの要素に分解して考えました。
まず、消費とは、私たち一般家庭が日々行う支出のことです。食料品や衣服、家電製品など、生活に必要なものから娯楽まで、様々な支出が含まれます。次に投資とは、企業が将来の生産拡大を見込んで行う設備投資です。新しい工場を建てたり、機械を導入したりすることで、生産能力を高め、将来の利益増加を目指します。三つ目の要素である政府支出は、国や地方自治体が行う支出です。道路や橋などの公共事業への支出や、教育や医療といった公共サービスへの支出が含まれます。最後の要素である純輸出は、輸出から輸入を差し引いたものです。自国で生産した製品を海外に販売する輸出は需要を増やし、逆に海外から製品を購入する輸入は需要を減らすため、その差額が総需要に影響を与えます。
ケインズは、これら四つの要素の中で特に投資の変動が景気の良し悪しに大きな影響を与えると考えました。企業は将来の収益を見込んで投資を行うため、将来の経済状況が不確実な場合は投資を控える傾向があります。例えば、景気が悪くなりそうだと感じれば、新しい工場を建てる計画を延期したり、設備の導入を見送ったりするでしょう。そうなると、需要が減少し、生産活動も縮小し、景気はさらに悪化するという悪循環に陥ります。逆に、将来の経済状況が明るいと感じれば、企業は積極的に投資を行い、生産を増やし、雇用も拡大します。このようにして、投資家の心理が景気を大きく左右するのです。人々の期待や見通しといった不確実な要素が経済活動に大きな影響を与えるというケインズの洞察は、現代経済においても重要な示唆を与え続けています。
乗数効果
経済活動において、あるきっかけで生じた変化が、雪だるま式に大きな効果をもたらすことがあります。これを乗数効果と呼び、経済学者ケインズが提唱した考え方の重要な要素です。
たとえば、国が公共事業に100億円を使うとします。このお金は、まず道路や橋などの建設に携わる会社に渡ります。会社は受け取ったお金で必要な材料を買い、働く人に賃金を支払います。材料を売った会社や賃金を受け取った人々は、そのお金で生活必需品や欲しい物を買ったり、サービスを利用したりします。
このように、国が出した100億円は、人々の間を回りながら次々と支出を生み出します。そして、最初の100億円よりもはるかに大きな経済効果を生み出すのです。これが乗数効果です。
もう少し詳しく見てみましょう。建設会社に渡った100億円は、材料費や賃金となり、材料会社やそこで働く人々の収入となります。その人々は受け取った収入の一部を貯蓄に回し、残りを消費に回します。この消費が、さらに別の会社や人々に新たな収入をもたらします。この連鎖が繰り返されることで、経済全体への影響は最初の100億円をはるかに超えるものになるのです。
乗数効果の大きさは、人々が収入のうちどれくらいを消費に回し、どれくらいを貯蓄に回すかによって変化します。貯蓄に回す割合が高いほど、乗数効果は小さくなります。また、消費に使われたお金が国内で生産された物やサービスに使われるか、輸入品に使われるかによっても効果は変わります。輸入品に使われれば、そのお金は国外に流出するため、国内の乗数効果は小さくなります。乗数効果を理解することは、国の経済政策の効果を正しく予測し、効果的な政策を実行するために不可欠です。
不況対策
不景気は、経済活動が縮小し、モノやサービスの需要が落ち込むことで、企業の生産活動が鈍り、失業者が増える深刻な状態です。このような不景気に対して、対策を立てることは経済の安定にとって不可欠です。
経済学者のケインズは、不景気には政府が財政政策を積極的に行うべきだと主張しました。人々や企業がお金を使う意欲が低い、つまり有効需要が不足している状態では、政府が率先してお金を使うことで需要を作り出し、経済を活性化できると考えたのです。
具体的には、道路や橋などの公共事業への投資や、人々の税金を減らす減税などが効果的な手段となります。公共事業に投資することで、建設作業員や資材供給業者など多くの雇用が生まれます。また、減税によって人々の手元に残るお金が増えれば、消費意欲が高まり、様々な商品やサービスが購入されるようになります。
これらの政策によって、仕事に就ける人が増え、所得の増加を通じて消費も活発になることで、経済は徐々に回復へと向かいます。ケインズの考え方は、世界恐慌後の経済政策に大きな影響を与え、多くの国で政府による積極的な景気対策が行われるようになりました。中でも、公共事業による雇用の創出は、不景気対策の代表的な方法として広く用いられました。
ただし、政府支出を増やすと、国の財政が赤字になる可能性があります。そのため、財政支出の規模や実施する時期については、経済状況を慎重に見極め、適切な判断をしなければなりません。景気を刺激する効果と、財政の健全性を保つことのバランスをうまくとることが重要です。
不景気の定義 | ケインズの主張 | 政策手段 | 効果 | 注意点 |
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経済活動の縮小、需要減退、生産鈍化、失業増加 | 政府による積極的な財政政策 | 公共事業への投資、減税 | 雇用創出、所得増加、消費活性化、景気回復 | 財政赤字の可能性、経済状況に応じた適切な判断が必要 |