GATT:自由貿易への道

GATT:自由貿易への道

投資の初心者

先生、「ガット」ってよく聞くんですけど、どういう意味ですか?

投資アドバイザー

いい質問だね。「ガット」は正式名称を『関税と貿易に関する一般協定』といって、国と国との間でモノを売り買いするときのルールを決めたものだよ。簡単に言うと、世界規模で貿易をもっと自由に、みんなが平等になるようにしようっていう国際的な約束事なんだ。

投資の初心者

なるほど。貿易のルールを決めた約束事なんですね。でも、どうしてそんな約束が必要なんですか?

投資アドバイザー

例えば、ある国が特定の国から輸入する品物だけに高い税金をかけていたらどうだろう?その国は他の国からモノを買わなくなって、貿易がうまくいかなくなるよね。だから、「ガット」では、特定の国をひいきしたり、差別したりせずに、みんな同じ条件で貿易できるようにルールを作ったんだ。今では「ガット」の後継としてWTO(世界貿易機関)があるんだよ。

GATTとは。

投資に関係のある言葉、「GATT」(ガット)について説明します。ガットは、正式には「関税と貿易に関する一般協定」といい、差別なく自由な貿易を行うことを目指した協定です。1995年の年末に廃止されました。

協定の目的

協定の目的

第二次世界大戦後、疲弊した世界経済を立て直すため、新しい国際的な貿易の仕組みが必要となりました。戦争によって疲弊した各国は、自国の産業を守るために高い関税をかけたり、輸入を制限したりするなど、保護貿易に傾倒しがちでした。しかし、このような保護貿易は、国際的な分業を阻害し、世界経済全体の成長を妨げる要因となることが懸念されました。そこで、国際貿易を活発化させ、世界経済の復興と成長を促すため、関税と貿易に関する一般協定、つまりGATTが締結されました。

GATTの大きな目的は、国際貿易における障壁を取り除き、自由な貿易を促進することです。これは、主に3つの原則に基づいて進められました。一つ目は、無差別の原則です。これは、特定の国に対して特別な待遇を与えず、全ての加盟国に平等に扱うというものです。二つ目は、透明性の原則です。貿易に関する規則や手続きを明確にし、公表することで、公平な競争環境を作ることを目指しました。三つ目は、相互主義の原則です。これは、ある国が関税を引き下げる場合、他の加盟国も同等の譲歩を行うというものです。これらの原則に基づき、GATTは、多国間での関税交渉や貿易ルール作りを通して、世界の貿易自由化を推進し、世界経済の発展に大きく貢献しました。GATTは後に、より包括的な貿易機関である世界貿易機関(WTO)へと発展し、今日に至るまで国際貿易の基盤となっています。

背景 第二次世界大戦後の世界経済の疲弊、保護貿易主義の台頭
目的 国際貿易の活発化、世界経済の復興と成長促進
手段 関税と貿易に関する一般協定(GATT)の締結
GATTの原則
  • 無差別:全ての加盟国を平等に扱う
  • 透明性:貿易ルールを明確化・公表し、公平な競争を促進
  • 相互主義:関税引き下げ等の譲歩を相互に行う
成果 貿易自由化の推進、世界経済の発展への貢献、WTOへの発展

主な内容

主な内容

{国際貿易の成長と安定}を図るため、関税及び貿易に関する一般協定(ガット)が重要な役割を果たしました。ガットの中心となる考え方は、関税の引き下げと貿易に関する決まりの整備でした。これは、世界中で活発な貿易を促し、経済の進歩を支えることを目指していました。

ガットで特に重要だったのが、最恵国待遇という考え方です。これは、ある国に特別な待遇を与えた場合、他の加盟国にも同じ待遇を与えなければならないという原則です。この原則によって、全ての加盟国が平等に扱われ、特定の国だけが有利にならないようにしました。例えば、ある国から輸入する品物の関税を下げた場合、他の加盟国から同じ品物を輸入する際にも、同じように関税を下げなければなりません。

また、ガットは輸入の量を制限することを原則として禁じました。これは、自由な貿易を妨げる要因を取り除くためです。ただし、例外として、国内産業を守るために一時的に輸入を制限することは認められました。しかし、このような制限は、公正で透明性のある手続きに基づいて行われなければなりませんでした。

さらに、不当に安い価格で商品を売る行為(ダンピング)を防ぐためのルールも定められました。ダンピングは、競争相手を排除し、市場を独占することを目的とする不公正な貿易行為です。ガットは、このような行為を取り締まることで、公正な競争環境を守ろうとしました。

加盟国間で貿易に関する問題が発生した場合のために、ガットは話し合いで解決するための仕組みも用意しました。この仕組みは、貿易摩擦を平和的に解決し、加盟国間の関係を良好に保つために役立ちました。これらのルールと仕組みによって、ガットは国際貿易をより安定したものにし、世界経済の発展に貢献しました。

ガットの目的 具体的な内容
国際貿易の成長と安定 関税の引き下げと貿易に関する決まりの整備
最恵国待遇(すべての加盟国に平等な待遇) ある国に与えた特別な待遇は、他の加盟国にも適用 ある国からの輸入品に関税の引き下げを実施した場合、他の加盟国からの同じ品物にも同じ関税率を適用
輸入数量制限の禁止(原則) 自由貿易の促進、国内産業保護のための例外あり(公正で透明性のある手続きが必要)
ダンピング防止 不当に安い価格での販売を禁止、公正な競争環境の維持
紛争解決の仕組み 加盟国間の貿易摩擦を平和的に解決

設立の背景

設立の背景

第二次世界大戦は、世界経済に大きな傷跡を残しました。多くの国々が戦火によって破壊され、生産活動は停滞し、人々の暮らしは困窮していました。また、各国は自国の産業を立て直すため、高い関税障壁や輸入の制限を設けて、外国製品の流入を防ぎ、国内市場を守ろうとしました

このような状況下では、国と国との貿易は縮小し、世界経済の回復は遅れるばかりでした。この問題を解決するためには、国際的な協力が必要不可欠でした。

そこで、国際貿易のルールを定め、多国間で貿易を行うための組織を作ろうという動きが生まれました。これは、世界の国々が共通のルールのもとで貿易を行うことで、互いに利益を得られるようにすることを目指したものでした。

こうして1948年に、関税と貿易に関する一般協定(GATT)が設立されました。GATTは、貿易における関税やその他の障壁を減らし、自由で公平な貿易を実現するための枠組みを提供しました。当初は暫定的な協定として考えられていましたが、加盟国の増加と貿易量の拡大に伴い、その役割はますます重要になっていきました。

GATTは、約50年にわたり国際貿易のルール作りと紛争解決の役割を担い、世界経済の発展に大きく貢献しました。しかし、時代の変化とともに新たな課題も浮上し、より包括的な国際機関の必要性が高まりました。そして1995年、GATTは世界貿易機関(WTO)へと発展し、新たな時代へと引き継がれていくことになりました。

課題と限界

課題と限界

関税及び貿易に関する一般協定(ガット)は、第二次世界大戦後の国際貿易の自由化に大きく貢献しました。しかし、その体制は次第に様々な問題点を抱えるようになり、限界を迎えることとなりました。

まず、ガットは物品の貿易に焦点を当てており、サービス貿易のような新しい分野への対応は不十分でした。例えば、金融や通信、観光といったサービス貿易は、世界経済において重要性を増していましたが、ガットのルールでは十分にカバーされていませんでした。また、ソフトウェアやブランドといった知的財産権の保護も、国際貿易において重要性を増していましたが、ガットでは十分な対応がとられていませんでした。これらの新しい分野におけるルール作りは、将来の課題として残されました。

さらに、ガットの紛争解決手続きは、その遅延が大きな問題となっていました。紛争が生じた場合、解決までに長い時間を要し、貿易摩擦の長期化につながることがありました。また、加盟国間の合意形成も難しく、多くの国が参加するガットにおいては、全員の意見をまとめるのに多大な労力と時間を要しました。利害が対立する国々の間で妥協点を見出すことは容易ではなく、交渉は難航することが多かったのです。

特に、農業分野は、各国の国内政策との兼ね合いで貿易自由化が難航しました。食料安全保障の観点から、多くの国が農業を保護する政策をとっており、関税の引下げや補助金の削減には強い抵抗がありました。農業分野の貿易自由化は、ガット体制における大きな課題として残され、解決への道筋は見いだせないままでした。

これらの課題は、ガット体制の限界を露呈させ、より包括的で、実効性のある新しい国際貿易体制の必要性を高めました。多様化する貿易の形態に対応し、迅速な紛争解決を可能にし、加盟国間の合意形成を円滑に進めることができる、新たな枠組みの構築が求められるようになったのです。

ガットの限界 課題 詳細
適用範囲の限界 サービス貿易への対応不足 金融、通信、観光などのサービス貿易の増加に対応できていなかった。
知的財産権の保護不足 ソフトウェアやブランドなどの知的財産権の保護が不十分だった。
新しい分野のルール未整備 新しい分野におけるルール作りが課題として残された。
紛争解決手続きの限界 紛争解決の遅延 解決に時間がかかり、貿易摩擦の長期化につながった。
合意形成の困難さ 加盟国間の合意形成の難しさ 多数の国々の意見をまとめるのに時間と労力がかかった。
利害対立の調整の難しさ 利害が対立する国々の妥協点を見出すのが困難で、交渉が難航した。
農業分野の特殊性 農業分野の貿易自由化の難航 食料安全保障の観点から、多くの国が農業保護政策を取り、関税引下げや補助金削減に抵抗があった。

WTOへの発展

WTOへの発展

かつて、関税と貿易に関する一般協定(ガット)という国際的な取り決めがありました。これは、第二次世界大戦後、世界各国が協力して、関税の引き下げを通じて貿易を盛んにし、経済を立て直そうという試みでした。しかし、時代が進むにつれて、ガットには限界が見えてきました。モノの貿易だけでなく、さまざまなサービスのやり取りや、著作権などの知的財産の保護についても、国際的なルールが必要になってきたのです。そこで、ガットを発展させる形で、1995年に世界貿易機関(WTO)が設立されました

WTOは、ガットの良い点を引き継ぎながら、より幅広い分野をカバーする組織として誕生しました。モノの貿易に関するルールはもちろんのこと、サービス貿易や知的財産権についても、加盟国全体で守るべきルール作りに取り組みました。例えば、海外旅行や国際電話、ソフトウェアの利用など、目に見えないサービスの貿易についても、自由化を進めるための議論が行われました。また、特許や商標、著作権などの知的財産権を国際的に保護するための枠組み作りも、WTOの重要な役割の一つとなりました。

さらに、WTOは、紛争解決の仕組みを強化しました。貿易に関するもめごとが起こった際に、加盟国同士の話し合いだけでは解決できない場合、WTOが仲裁役となって解決を促す仕組みです。ガット時代には、紛争解決に時間がかかったり、解決に至らなかったりするケースもありましたが、WTOでは、より迅速かつ確実な紛争解決を目指しました。これにより、加盟国は安心して貿易を行うことができるようになり、国際貿易の安定化につながりました。

WTOの設立は、世界の貿易にとって大きな転換点となりました。WTOは、多くの国が参加する多国間貿易体制の中心的な存在として、世界の貿易ルール作りや、ルールが正しく守られているかの監視など、重要な役割を担っています。WTOの活動は、世界経済のグローバル化を促進し、国際的な分業体制を支える上で、なくてはならないものとなっています。

項目 内容
ガット(GATT) 第二次世界大戦後、関税引き下げによる貿易活性化を目的とした国際協定。時代と共に限界が見え始める。
WTO設立 1995年、ガットを発展させ、サービス貿易や知的財産権保護を含むより広範な分野を扱う組織として設立。
WTOの役割
  • 物品貿易、サービス貿易、知的財産権に関するルール作り
  • 紛争解決機能の強化(迅速かつ確実な解決)
  • 貿易ルールの監視、国際貿易の安定化
  • 多国間貿易体制の中心
  • 世界経済のグローバル化促進