好景気の呼び名:時代を映す景気
世の中が活気に満ち、物が良く売れ、人々の暮らし向きが良くなる時期が長く続くと、その時代を象徴する呼び名が付けられることがあります。まるで時代のニックネームのようなものです。特に、高度経済成長期には、日本の神話にちなんだ名前が多く使われました。例えば「神武景気」や「岩戸景気」などは、日本を建国したとされる神武天皇や、天照大神が隠れた天岩戸の神話に由来しています。これらの名前は古事記や日本書紀といった古い書物から取られており、当時の活況や将来への明るい見通しを人々に強く印象付けました。人々は、景気の良さを神話の時代の繁栄になぞらえ、希望に満ちた未来を描いていたのです。
近年では、国際的な大きな催し物に関連付けた名前や、当時の政治の施策を反映した名前も使われるようになってきました。例えば、2020年の東京五輪を控えた時期は「五輪景気」という言葉が盛んに使われました。これは、五輪開催に向けた建設需要や観光客の増加による経済効果への期待を反映したものです。また、「アベノミクス景気」といった呼び名は、当時の首相の経済政策を表す言葉として使われました。このように、景気の呼び名は、単なる経済の状況を表す指標を超えて、時代の背景や社会全体の雰囲気を映し出す鏡のような役割を果たしています。人々がどのような出来事に注目し、どのような希望や不安を抱いていたのか、景気の呼び名を通して、当時の社会の様子を垣間見ることができます。まるで、時代のアルバムをめくるように、過去の出来事を振り返り、未来への展望を考えるきっかけを与えてくれるのです。