投資乗数:経済効果を増幅する仕組み
投資乗数とは、ある金額の投資が国民全体の所得をどれくらい増やすかを示す指標です。最初の投資が、まるで波紋のように経済全体に広がり、最初の投資額よりも大きな経済効果を生み出すことを表しています。たとえば、国が道路や橋などの公共事業に100億円を投資したとしましょう。この投資によって、建設会社は工事を請け負い、作業員を雇い、必要な資材を購入します。雇われた作業員たちは給料を受け取り、そのお金で生活用品や食料品などを買います。資材を納めた会社も利益を得て、設備投資や新たな雇用を生み出します。このように、人々の消費や企業の活動が活発になり、経済全体が潤っていきます。最初の100億円の投資がきっかけで、人から人へ、企業から企業へとお金が回り、最終的には何倍もの国民所得の増加につながる可能性があります。これが投資乗数の効果です。投資乗数の大きさは、景気の良し悪しや人々の消費行動によって変わってきます。人々が所得が増えた分を積極的に消費に使う傾向、つまり消費性向が高いほど、乗数は大きくなります。例えば、所得が増えた分を多く貯蓄に回してしまうと、お金の流れが滞り、乗数は小さくなってしまいます。反対に、所得が増えた分をほとんど消費に回す社会では、お金が活発に循環し、乗数は大きくなります。これは、人々の消費が次の企業の生産活動につながり、さらなる雇用を生み出すという好循環を生み出すからです。このように、投資乗数は経済の動きを理解する上で重要な指標であり、国の経済政策にも大きな影響を与えています。